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第5話

 ほぼ意味を成さなかったエプロンを外され、背中のファスナーを下まで下ろされた。  するりと肩から胸元を露わにするように、脱がされる。だが、全部を脱がされる前に、樹に肩を甘噛みされた。 「……ん、っん……」  反応を見るようにちらりと視線が飛んで来る。噛まれた所をちろちろ舐め、そこから鎖骨、喉から上がっていき終着点は唇だった。 「……久しぶりにお前のそういう顔見る……」 「……?」 「……早く欲しいって顔……すごくそそられる」  自分がどんな顔をしているのかは分からないが、それを見たがっているのは樹の表情で分かる。途端に恥ずかしくなる、隠せる筈もないのに、頬をシーツに付け横を向いた。 「耳、弱いのに、お前なぁ……」  クスクスと笑う声が耳朶をやんわりと噛む。本当に可愛い、低い声に耳の中を犯される。  捲られただけなので、中途半端にワンピースを着たままだ。せめて上半身だけでも脱ぎたかった。だけど、そんな優志の行動は見透かされていたようで、先に胸を弄られてしまった。 「んん……!」  欲しかった刺激がやっと与えられ声が漏れる。もっと触って欲しい気持ちもあるが、ワンピースも脱がして欲しい。 「いつ……ぁん……あ、ん、ちょ……」 「ここ、触って欲しかったんだろ?」 「んー……!」  乳首を摘ままれ、軽く引っ張られる。鈍痛にきゅっと目を瞑るが、直ぐにそこは温かい粘膜に包まれた。口に含まれ、舌先が優しくつつく。まるで痛くしてごめん、と言っているような愛撫だ。  片方は舐められ、もう片方は指の腹で軽く押し潰す。胸しか弄られていないのに、自分でもそう思うのに、体は正直に気持ちいいと零す。 「ちゃんと、履いて来た……?」  上体を起こし、覗き込むように瞳を見つめられ目が泳ぐ。答えを急くように、樹が名前を呼んで来る。 「優志」 「……うん……」 「じゃあ、見せて」 「……え……」 「見せてくれないと、触れないだろ?」 「……」  上気した頬に潤んだ瞳で睨み付けた所で樹に効果はない。煽るだけなので、むしろ逆効果だ。 「……ぅう」  唸るような呟きの後、優志はもたもたと絡みついている袖が邪魔だと思いながらも、手を伸ばしスカートを捲り上げた。  腹の上まで捲り、力尽きたように手をシーツの上に投げ出す。少しだけ自棄になっていた。 「……つか、これ……どこで買ってきたの……」 「あぁ、通販」 「え?!」 「そんなに驚く事もないだろ、何でも買えるぞ、通販で」 「……」  孝介にも指摘されたが、やはりこういう物を買うなら通販がいいようだ。 「あと、これ男物だからな」 「え……?」 「こっちな」  こっち、と言って優志が身に着けた白いショーツの腰紐のリボンを指で玩ぶ。 「お、男物なの?このパンツ……」 「あぁ、まぁ女性が履いてもいいって書いてあったからどっちでも使える物なんだろ、腰紐だから調整もしやすいだろうし」 「……へぇ……」  腰紐の片側を指で引き、解く。どうせなら両方解いて欲しかったが、脱がす気はないらしい。 「後で洗わないとなぁ、濡れてる……すげぇ溜まってる感じだな……自分でしなかった?」  ショーツ越しに捕まれ、先端を指先で押し込まれる。濡れたそこはますますシミを広げた。 「や、ちょ……脱ぐ……」 「洗ってやるから……」  そういう問題ではない。樹は聞き入れるつもりはないのか、そのまま上下に動かした。 「あ……っん、ぁんん……」 「一人でしなかった?」 「……あ、あんまり……本番中は……そんなに、気に……ならない、し……はぁ……」 「そっか……でも、稽古中から全然会えなかったし、出来なかったもんな……」 「うん……」 「じゃあ、こっち……寂しかった……?」 「!」  こっち、と言ってショーツの上から尻の割れ目をなぞられる。直接触られた訳でもないのに、後孔がひくりと蠢く。 「……触ってほし?」 「……ん……うん……」  樹の指が孔の上をショーツ越しに擦る。ペニスはずっと触られたままだったので、絶頂が近い。 「い、つき、さん……も……」 「うん……いいぞ、いって」 「……ぁあんん……!」  ショーツごと掴まれていた樹の手の中で白濁を吐き出す。息の整わない優志の顔に影が落ち、樹の顔が近付く。 「……ふ……ん……」  濡れたショーツをどうにかしたいと思うのに、キスをされてしまうと意識は全て樹に取り上げられてしまう。  でも、射精後のキスは好きだった。まだまだ終わらせないって言われているみたいで、もっと続きが欲しくなる。 「……樹さん……」 「あー……これ、洗わなとな」 「あとで、いいから……」 「……そうか?」 「……ん、ずるい……もう……あんま、焦らさないでよ……」  樹は困ったような苦笑を浮かべると、ごめんな、と触れるだけのキスをした。 「……じゃあ、優志の望み通り……まずは脱がすか」 「……うん……」  本当はそれが一番の望みではないけれど。そんな事もきっと樹はお見通しなのだろう、やっぱり困ったように笑いながら言う。 「オレだって早くお前が欲しいよ」 「……うん」  腕を伸ばして抱き付けないのがもどかしい。脱がして貰うのが一番で正解みたいだ。キスを受けながら、そんな風に思った。

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