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第6話

「いつ、きさん……はぁ……ん……ぁ……はぁ……」  バラバラと中で動く樹の指を感じながら、伏せていた顔を上げ後を振り返る。 メイド服も下着も靴下も全部脱がしてもらえた。樹の方も全部脱いだので、床の上には二人分服が散らばっていた。 「もう……少しな……」 「んん……はぁ……」  焦らしているのではなく、久しぶりの優志の体を気遣い、いつもより時間を掛けて体を慣らしてくれているのは分かる。だけど、久しぶりなのだ。  優志は腹這いになり、腰だけを高く上げる姿勢でいたので樹の表情を見る事が出来なかった。なので、振り返り分かった。樹だって、我慢してくれているのが。  だから。 「樹さん……」  さっき、欲しいと言ってくれたのに。  まだ、と言うように樹の指は中を撹拌するように動く。時折優志の感じる所を指が掠めるが、それ以上の刺激は与えてくれない。 「んん……」  シーツを握る手に力を込め、体の中の快楽を逃がす努力をしても、燻るそれは消える事はなく優志の中に蓄積される一方だ。 「樹さん……」  切なげな吐息と共に呼ばれる名前に、樹が音を上げる。 「……優志……もう、平気か……?」 「ん……へいき、も……きて……」  指が抜かれる。優志はシーツの上で反転し、体を仰向けに変えた。 「……樹さん……はやくぅ……」  足裏に腕を入れ、見せつけるように腰を浮かす。恥ずかしい恰好をしていると、羞恥心からこれ以上ない位に頬が赤くなってしまう。だけど、そんな事には構っていられない。  それ程に欲しているから。 「樹さん……」 「……お前な……」  ローションで濡れた孔は樹を誘うようにひくりと蠢く。はぁー、と溜息とも取れる長い息を吐き出し、用意しておいたゴムを取り上げる樹を見上げ、早くと急かすように愛しい人の名を呼ぶ。 「樹さん……」 「優志」  優志の足首を片方だけ肩に担ぎあげ、そのまま自身を後孔に宛がうと、ぐぐっと中に樹が押し入って来た。 「ぁあ、うんん……」  良く解されたそこは大した抵抗もせず、樹の全てを飲み込むと歓喜するように蠢き締め付けた。 「……はぁ……待て待て……あんまり締め付けないでくれ……」 「そんな、こと……言われても……ぁあ、あ、んん……」  わざとやっている訳ではないのだ。自分が締め付けている感覚はあるのだが、わざと力を入れている訳ではない。  まだ入れたばかりなので、樹の動きは様子をみているようにゆったりとしたものだった。 「あ、ん……」  それでも久しぶりに繋がった喜びに、優志は濡れた瞳で愛しそうに樹を見上げた。  大好きな人と触れ合えるのが嬉しい。樹が好きだと、その瞳が雄弁に語る。 「……優志……」  動きを一旦止め、その眼差しを受け止めるように、樹は上からじっと優志を見つめた。 「……ほんとにかわいいな……」  ふふっと笑うと、優志は少しだけ拗ねたように口を尖らせた。 「優志……」  その唇の先端にキスを落とす。ちゅっと音を立て直ぐに離そうとしたのだが、優志はまだだと言うように手を伸ばし背中に抱き付いた。 「樹さん……」  樹は体重を掛けないよう覆い被さり、キスをした。何度も何度も。  キスをしながら止めていた腰の動きを徐々に再開すれば、優志からは堪らず嬌声が漏れた。 「……あ、ぁあん……」  ゆっくりと抜き差しを繰り返していたが、樹はそのストロークを速めた。  指で掠められただけだった場所が力強く擦り上げられ、優志はその愉悦に耐えるように目をぎゅっと瞑った。 「……優志」 「あ、いつき、さ、も……オレ……あ、ぁん、だめ……もう……」 「あぁ……オレも、もたなそうだ……」  珍しく余裕のない声が耳に届く。  その声に目を開ければ、声と同じで切羽詰まったような顔の樹と目が合った。 「……」 「……何、何か言いたい……?」 「……ううん……ちが……ぁ、あ、だって……ん……樹さんも……」 「うん……ずっと、お前とこうしたかったよ」 「……うん……あ、ん、も……ぁあああん……!」  ぎゅうっと樹の背中を抱きしめ、優志は絶頂を迎えた。二人の間にある優志のペニスからどくどくと溢れる白濁は腹の上に撒かれ、胸にも飛んでいた。  そしてほぼ同時に、樹も優志の中で果てていた。二人して整わない息のまま、だけど隙間を埋めるように抱き締め合ってキスをした。  

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