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第3話
「……し……ゆう…………ゆうし……」
「……ん……」
ぼんやりと浮上する意識の中、心地よく耳に届いたのは愛しい人の声。
「……優志……寝ててもいいけど……」
「…………いつ…………」
起きるよ、そう言いたかったのに開いた唇は音を成さない。だが、声にならなかった音はそのまま掠れ、吐息に変わった。
「……ふぅ……んん……」
胸に感じるのは何だろう、と思うと同時に体は理解した。何をされているのかを。
「……い、つき……」
「うん……お前は寝てていいよ」
「ぁ……ぅん……」
ティーシャツの中に入ってきた樹の手は、平らな優志の胸の上を往復するように撫でてから乳首の上で止まった。
あれ、と思った。目を開けているのに視界が暗い。そこで漸く顔の違和感に思い至り、アイマスクを着けたままだと思い出す。
まだ大分寝ぼけているようだ。
だが、樹は寝ぼけていようが構わず、優志の体を弄る。
「……樹さん……おきる……んんっ」
樹の指が小さな乳首を引っ張るように摘まみ、もう片方も同じように摘ままれる。
もう起きた、から。
唇を塞ぐようなキスに言葉にする事が出来ない。
「……そのままでいいよ」
「……えっ……?」
ぐいっとティーシャツを首の辺りまで捲り上げられ、上半身がエアコンの冷気に晒される。寒くはなかったが突然だったので、びっくりしてしまう。
「いつ……ぁんっ!」
せめてアイマスクをと言いたいのに、乳首をきつく吸い上げられ、何も言えなくなる。
どこをどうすれば陥落するのか、樹にはそれが簡単に分かるので何かを言える訳もない。
「……ん!いつきさん、も、とるっ……」
両の腕を掴まれている訳でもないのに自由がきかない。
胸を吸われ、舌先が突くように動く。そんな風に弄られれば、どうしても下半身に熱が集中していく。
下着の布地を持ち上げ始めたそこにも、樹の手が伸びた。
「……!」
やわやわと揉みしだかれ、そこが完全に立ち上がる前にボクブリを脱がされる。
よかった、パンツ洗わずに済んだと内心ほっとしたのも束の間、直ぐに樹の手は膨らみだした優志自身を握ると上下に扱き始めた。
「……んっ、あ、いつき、さん……」
ここまでくれば、アイマスクを外されるのは事が終わった後だろうと想像が付く。でも、視界を奪われたままなのは、正直少し怖い。
「……樹さん……見えない、の、やっ……」
「やだ?」
「ん……はぁ……んん……」
とろりと蜜を垂れ始めた先端を執拗にせめられ、限界は直ぐそこまで来ていた。
「んー……でもなぁ……」
樹が半身を起こしたのが気配で伝わる。
乳首とぺニスから手が離れると、急にそこが寂しくなる。心許ないというか。勝手に焦燥感が湧き上がってくるのは困ったものだ。
「樹さん……」
優志の声は不安そうだ。そんな優志を見下ろしながら、樹は薄く微笑んだ。
アイマスクの下の頬は赤く染まり、同じように血色を良くした赤い唇。半開きの口から覗く舌。行為からか、白い肌は桜色に染まり、つんと尖らせた小さな乳首、下生えも濡らし起立した性器。
全部が扇情的で樹の劣情を煽る。自分にしか見せない恥態は、今、優志の視界も奪い樹だけのもの。
雄の顔で笑いながら続ける。
「優志が着けたんだろ?」
「……そ、それは……そうだけど……」
従順、とでも言えばいいのか、両手を縛られている訳でもないので、アイマスクを外そうと思えばいつだって外せるのに。
外して欲しい、というのだろう。
自分で着けたというのに、矛盾している。
でも、そんなところもたまならく。
「……かわいいなぁ、お前は……」
声の響きで分かったのだろう、優志の体が緊張したように固まる。付き合いも随分長くなったのだ、かわいいなんて言いながらかわいくない事をされるのはいつもの事。
それは樹にも伝わっている。喉の奥でくつくつと笑いながら、高価な陶器を触るような丁寧な手付きで優志の頬を一撫でした。
「かわいいよ、優志」
「……」
見えないから、ではなく本当に何をされるのか分からない。こわい、のは恐怖と少し違う。好奇心の方がきっと近い。でもそれは樹に対してしか湧いてこない。
背徳的な喜びにぞくりと体が震えた。
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