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第4話

 いつも明るい部屋でするのは恥ずかしいなんて思ってた。でも、いざ視界を奪われると、明るくてもいいので視界が欲しいし、樹が見たいと思ってしまう。  そもそも自分だけ目隠しされているのは、ずるくないか? もう何度も何度もこの行為をしているので、ある程度何をされるかは分かっている。樹が無理な事、というか優志が痛がるような事はしないのも分かっている。  でも、予想出来るのは樹も同じだ。優志がこうされるのではないかと身構えれば身構える程、別のアプローチで攻めてくる。 「……んん!!」  突然脇腹を甘噛されるなんて思う訳ないじゃん!!! いつもそんな所噛んだりしないのに!文句を言ってやりたいのに、単語すらままならない。 「……あ、ん……も、やっ……」  くちゅくちゅといやらしい音を立て、さっきから樹の指が体の中を翻弄している。指の動きは不規則で、優志の良い所を突いたと思えば、不意に指は抜かれ孔の周りを悪戯になぞったり。  いつも以上に焦らされている。本当はそんな事もないのだが、視覚がないので感覚がいつもより敏感になっているが本人は気付かない。 「ひゃっ……ふっ、んん……いつ……き、さん……も、やだぁ……」  甘い嬌声を出しながら身悶える。  きっと樹は厭らしい顔で笑っているのだ。見なくても分かる。これが嗜虐だなんて思っていない顔で、獲物を甚振る獣のように。 「んんー!」 でも、嫌だと叫べないのは優志がそれを受け入れているから。 ……喜んでるなんて思われていたら困るけど。  指が最奥を強く押す。後ろの刺激だけでは達けないけれど、過ぎる快感を持て余すように優志はシーツを握りしめた。 「いつき、さん……も……樹さんの、かお、みせてよ……」 「……」  一瞬樹の指遣いが止まる。そのままするりと抜け、優志は体を弛緩させた。 「……優志」 「!」  突然開けた視界に眩しくて目を瞑ると、直ぐに照明を隠すように樹が体を動かした。 「いつきさん……」  ぼやけた視界に樹が映る。目元を樹の指が優しく撫で、そこが濡れている事を知る。泣きたくて泣いていた訳ではない、多分それは樹も分かっているだろう。 「……樹さん……」 腕を伸ばせば樹は上体を屈めてくれたので、その背中を両手で抱きしめる。 「……優志」 静かに名前を呼ばれ、腕を緩めて正面を向き合う。  意地悪く笑っていると思ったのに、樹はなんだか神妙な顔だ。困っているようにも見える。 「……樹さん……?」 「……」  樹の手がさわさわと頬を撫でる。優しい手付きに思わず目を閉じ、口許を緩めると何故かため息を吐かれた。 「樹さん?」 「……お前はオレに対して甘過ぎる……」 「え……?」 「オレがそうさせてるのは分かっているんだけど……」 「……」 「オレが悪いんだけど……その……」 「うん」 「……いじめすぎたか?」 「……樹さんはそう思ってるの……?」 「……」  質問に質問で返すのは狡かっただろうか。何だか苦い物でも食べたような顔で見返されてしまった。  でも、そんな事聞かれるとは思わなかったし、樹が気にしているとも思わなかったので意外だ。 「……何でもかんでも、受け入れない方がいいんじゃないか?」 「でも……ほんとうに嫌な事はしないでしょ……?」 「……あのな」 「……ていうか、こういうのは普通聞くものなの?聞くなら最初に聞いてくれればいいのに」  呆れた訳ではなかったが、最中にする話でもないだろうという気持ちを込めて伝える。 「だって、目隠しプレイさせてくれって言って、お前はいいって言うのか?」 「…………」  それはどうだろう。迷う。でも、多分。 「でも、樹さんがしたいなら……」  いいよ。小さく言えばまたため息を吐かれた。何故だ。 「もう!それはもういいよ……続き……しないの……?」 「……そうだな……」 「……脱ぐ……?」 「脱ぐよ」  苦笑を浮かべる樹から腕を離す。上体を起こし、ティーシャツを脱ぎ始める樹を見上げ優志も同じように困ったような笑みを浮かべた。

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