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しんしんと……
◆◆◆◆
身体が火照る。
熱の熱さなのか部屋の暑さなのか自分では分からない。
ザワザワとした気配を何となく感じ取っていたけれど、次に目を開けた時は真夜中だった。
アキラさんがベッドに顔を伏せて眠っている。
えっ……今、何時?
ベッドの側の時計を見ると真夜中を過ぎていた。
嘘……俺、そんなに寝てたの?
アキラさんが仕事に行くのまでは覚えている。その後……どうしたっけ?
あ、雅美さん……
雅美さんが居たような?
ゆっくりと起き上がると少し目眩がした。
でも、トイレにも行きたいし、喉も渇いた。ふらつくけれど、トイレとかの為に寝ているアキラさんは起こせない。
フラフラと歩いてトイレへ向かうと「ユノ」と名前を呼ばれた。
振り向くと雅美さん。
えっ?雅美さん……まだ、居てくれてたの?
「ユノ、どうしたの?気持ち悪い?」
心配そうな雅美さん。
「トイレ行きたくて……あと、水も飲みたい」
「水?水はベッドの側に置いてたよ」
えっ?そうなんだ……良く見てなかったな。
「大丈夫?1人で出来る?」
「うん」
うんって返事した後に雅美さん……1人で大丈夫ってトイレの事を聞いたんだよね?ちょっと大胆な……トイレしてるとことか見せられない。
俺はそそくさとトイレへ逃げ込んだ。
逃げ込んで気付く、雅美さんがトイレの外にいるなら音聞こえるじゃん?
おしっこしてる音……女の子じゃないけれど、流石に音を雅美さんに聞かれるのは恥しくてもったいないけれど、トイレの水を流しながら済ませた。
トイレを出ると雅美さんが待っていた。
うん……やっぱり音を聞かれる距離にいたな。
フラフラと歩くと、雅美さんが直ぐに支えに来てくれた。
「ユノ、インフルエンザだって」
「えっ?誰が?」
「ユノが」
「えっ……嘘」
インフルエンザ……だからかな?身体全部がだるい。特に節々が。
「病院に連れて行ったんだよ、ユノは嫌がったけれど、覚えてる?」
「病院?」
えっ、俺って病院行ったんだ……全く覚えていない。
「病院についても僕から離れなくて診察が大変だったみたいだよ」
「えっ?えっ?どういう事?」
「抱っこしてってずっと、離れなかったんだ……熱が高いからかな?小さい子供みたいでユノ、可愛かったよ」
その言葉に俺は倒れたいくらいに衝撃を受けた。確かに雅美さんの匂いを覚えている。
あれは、抱き着いていたからなのか……
マジか!!!
やって、しまった……
「ユノは1週間は外出禁止ね」
「えっ?」
「えっ、じゃないよインフルエンザでしょ?」
インフルエンザ……かあ。
んん?インフルエンザ?あ!!!やばい!!
「ま、雅美さん感染っちゃう」
俺は雅美さんから離れようとした。
「大丈夫だよ、僕もじい様もインフルエンザの予防接種はしているんだ」
「えっ?そうなの?」
「ユノにもさせようってじい様と話していた矢先にインフルエンザになるんだもん……次からは早めにしようね」
雅美さんはニコッと微笑む。
「ちなみにアキラも予防接種してるから大丈夫だよ?ほら、接客しているからお客さんから感染したり、自分がお客さんにうつしたりしちゃうだろ?」
ああ、確かに……
「商店街でもね、インフルエンザ流行ってるんだよ、それでユノに感染しちゃったみたいだね」
うう、俺ってば……
本当に迷惑ばかり。
「ほら、ユノ、寝なきゃ」
雅美さんは俺をフワリと抱き上げた。
雅美さんは華奢だ。アキラさんみたいに筋肉があるってわけではないのに俺を軽々と抱き上げる。
「ユノは軽いね」
雅美さんは微笑む。
優しく微笑みと雅美さんの甘い香。
凄く安心してしまう。
恥ずかしいけれど、つい、雅美さんに甘えるように寄り添ってしまった。
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