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しんしんと……3話

◆◆◆◆ どれくらい寝ていたのだろうか? 目を開けると静かだった。 「雅美さん?」 余りにも静か過ぎて不安になり、名前を呼んだ。 でも、返事がない。 起き上がろうとするけれど、身体がだるいし、頭も痛い。 節々が特に痛くて起き上がるのに苦労した。 人間、節々が痛いだけで起き上がるのにこんなに苦労するのかと驚く。 病気になると健康な自分が懐かしくなるけれど、今がまさにそう! 昨日までかな?元気でさ……怪我してるけれど普通に仕事行けたし、まあ、事務だけど。 「……だるい……」 起き上がってみたもののだるくて前のめりになる。 「ユノ!」 アキラさんの声。 アキラさん? 顔を上げると「ユノどうした?」と心配そうな顔。 「おかえりなさい」 思わずそう言った。 「うん……ただいま……って、どうした?水?」 俺の身体を支えるアキラさん。 「目……覚ましたら静かで……凄く……不安になって……それで……」 それで、俺はどうしようと起き上がったんだっけ? あ、そうだ!雅美さん……雅美さんを探そうとしてたんだ。 「そうか……熱、辛いもんな……様子見に帰ってきて良かった」 アキラさんは俺をベッドに寝かせる。 「様子?」 「うん、この時間帯、予約のお客さんがいなかったから店閉めて来たんだ」 「そうなの?大丈夫?」 「馬鹿……俺の心配よりユノだろ?熱下がらないな……ちょっと、待ってて」 アキラさんは寝室を出て行く。 「まー!!」 雅美さんを呼ぶ声。 あ、良かった……雅美さん帰っていなかったんだ。 「ユノの熱下がらない!病院に」 「薬は貰ってるよ」 「じゃあ、薬」 「飲めるかな?あの子、薬嫌いだから」 そんな会話が聞こえてくる。 ……うん、薬嫌い。でも、そんな事言っていられない。迷惑かかるから早く治したい。 足音が2人分聞こえてきた。 「ユノ」 雅美さんとアキラさんに同時に呼ばれる。 「薬」 「うん」 俺は素直に返事をする。 「食事が先だな、まだ、食べていないから」 「ユノ、食べれるか?」 雅美さんとアキラさんが交互に俺に話しかける。 食欲……あんまりないかも。でも、少しなら。 起き上がろうとすると、アキラさんが俺の身体を支えながら起こしてくれた。 「食べれる?」 雅美さんがお粥を運んできてくれてた。 「少しなら」 俺がそう言うとアキラさんがレンゲにお粥をすくって俺の目の前に。 これって、食べさせてくれるって事かな? 俺はそのレンゲをパクンとくわえた。 「可愛い」 2人同時に可愛いって言った。何が可愛い?レンゲ?お粥? もう一口食べる。 「ユノ、何か小さい子みたいで可愛いよ」 雅美さんに言われた。 「うん、俺も思った」 可愛いって俺の事? 反論するにも体力ないし、別に悪い事言われたわけじゃないから、そのまま食べ続ける。 その間も可愛いって何度か言われた。 食べた後に薬……。嫌だけど飲むしかない。 「今日はいい子だね」 素直に飲んだから雅美さんに誉められ、アキラさんには頭を撫でられた。 薬を飲んで横になるとアキラさんが時間を気にしているようで……あ、仕事抜けて来てくれたもんね。って戻ってしまう寂しさが込み上げる。 「まー、ユノの熱下がらなかったら病院に」 「そうだね」 そんな会話をして、アキラさんは仕事へと戻って行った。 「ユノ……大丈夫?」 雅美さんの手のひらが額に当てられる。 「うん」 大丈夫。さっきまで寂しかったけれど、アキラさんと雅美さんに元気を貰った気がする。 「子守り唄、歌ってあげようか?」 微笑む雅美さん。 「手……握って」 「……手?」 「うん」 俺が手を伸ばすと雅美さんがギュッと握ってくれた。 「いい子だねユノ」 頭まで撫でてくれたから、安心して目を閉じた。 ◆◆◆◆ 次の日……熱が下がらないものだから、アキラさんと雅美さんに連れられて病院に来た。 アキラさんはわざわざ予約を昼に変えてくれてまで……本当、申し訳ない。 雅美さんだって、仕事あるのに。 じい様……1人で大丈夫かな? まあ、暇な写真館だけど。 怪我の様子も見せなきゃいけないし、どちらにせよ病院は来なくてはいけない。 診察やら色々終わり、待合室に俺とアキラさんを置いて雅美さんが会計をしに行った。 「ユノ、先に車に行くか?」 アキラさんが俺を気遣う。 「大丈夫……」 そう言った時に「川畑!」と聞いた事がある声で名前を呼ばれた。 マキタキイチ。 本当、この病院に来るとコイツに会うよな……。

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