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しんしんと……4話

「あれ?アキラさん?」 マキタキイチが驚いた声でアキラさんの名前を呼んだ。 えっ?アキラさんを知ってるの?そっちに驚くよ。 「キイチ君、仕事?ここも管轄なの?」 「うん……って、何でアキラさん、川畑と一緒なんですか?知り合い?」 俺とアキラさんを交互に見ている。それはこっちのセリフ。アキラさんと知り合い? 「そっちこそ、何でユノを知ってるの?」 「同級生だから……覚えられていないけど」 「あ、もしかして話してた同級生の子ってユノの事?」 「うん、そう!」 んん?何の話? 2人で盛り上がって、俺は訳が分からないというのに。 「そっか、良く話してた同級生の子はユノだったか、……キイチ君は店の常連なんだよ、通ってくれて結構経つよな?」 「うん、福岡引っ越して来てからだから……3年?」 その会話でようやく、アキラさんとマキタキイチの関係が分かった。 お店のお客さんか。なるほど。 「アキラさん、いつから川畑と知り合いなの?」 「ユノがこっち来てから」 「えっ?マジで……俺、川畑がこっちに居るのも知らなかったもんなあ」 「何、そんな残念そうなんだよ?」 クスクス笑うアキラさん。 「故郷離れてさ、数年経って同級生に会ってみれば同級生だったのも忘れられてたしさ……そんな同級生とアキラさんは超仲良しそうだし……」 マキタキイチは俺を何だか恨めしそうに見ている気がする。 覚えていなかったのがそんなに残念なのか……。 あ、でも…… 「会話……したの思い出した」 「へ?」 「どんなのかタイプか聞いてきただろ?」 「えっ……あ、うん!聞いた」 マキタキイチは見た事ないような嬉しそうな顔をした。 何で、そんなに嬉しそうな顔するんだろ?ただ、思い出しただけなのに。 「何?その会話?高校の時?」 「うん、そう!川畑、いつも恋愛の話はスルーしててさ、コイツ、高校の時、結構人気あったんだよ?顔、可愛いから……俺は川畑の隣の席だっていうだけで、女の子達から彼女居るか聞いて?とか、どんなタイプが好きか聞いて?とか煩かったんだ」 アキラさんの問いかけの答えが俺も知らない内容。 人気あったとか……俺、知らないし。 「マジか!!ユノ、やっぱ、モテてたんだ?」 アキラさんは俺を見る。 「知らない……興味無かったから」 「えー……気付いてなかったって凄いなあ」 マキタキイチが何か感動した顔をして俺を見ている。 「バレンタインとかチョコ沢山貰ったんじゃ?」 「学校はチョコ禁止だったんです」 アキラさんの質問に答える。 小中高とチョコ行事は禁止だった。貰えない子が可哀想だし、学校は勉強する所でお菓子を持って行く所ではない。そんな理由だったと思う。 チョコは施設の人達が皆に配ってた。 女の子にも男の子にも。 みんな、それが楽しみだった。 俺も小さい時はチョコが食べれるって楽しみにしてたな。 「ところで川畑……なんか、顔赤いけど?怪我のせい?」 「あ!!キイチ君、ユノ、インフルエンザなんだよ、感染っちゃうかも」 アキラさんが慌てる。 あ、そうか、感染っちゃうかも。 「いや、俺は平気ですよ、病院に出入りしてるから予防接種とかしてますもん」 ああ、ここにも予防接種完了の人が……皆、するんだな。 「だから、顔赤いのか……大丈夫なのか?」 マキタキイチは心配そうに俺を見る。 「家でどうしてんの?川畑って一人暮らし?」 「それなら大丈夫、俺がいるし」 「あ、だから一緒なのか」 マキタキイチの心配にアキラさんが答える。 どうして、マキタキイチはそんなに心配してくれるのだろうか?不思議だ。 「お待たせ」 丁度、雅美さんが帰ってきた。 「あ、川畑のお兄さん」 「あれ?同級生の子」 マキタキイチと雅美さんの会話にアキラさんがキョトン。 そりゃ、2人が出会っているのを知らないもんね。 「まー、キイチ君知ってるの?」 「うん、この前、ここで会った」 「あ、そうか……」 アキラさんは1人納得している。 「アキラさんと川畑のお兄さんって知り合いなんですか?」 「幼なじみだよ」 ニコッと笑う雅美さん。 「えっ?同じ年なんですか?あれ?川畑のお兄さんってもっと若いって勝手に思ってました。川畑より2コ上くらい?」 「わあ!ありがとう」 雅美さんはニコニコ。 「そのえっ?ってなんだよ、俺がフケてるっていうのか!!!」 雅美さんのニコニコと怒るアキラさんが対象的で何か笑える。 「アキラ、そろそろ帰らないとユノが辛そう」 「あ!ごめん」 雅美さんの言葉にアキラさんとマキタキイチの声がかぶる。 雅美さんは俺を支えながら立たせた。 「川畑……お大事に」 マキタキイチは俺にそう言うと雅美さんとアキラさんに会釈して何処かへ歩いて行った。

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