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第4話
で、俺はまだうたた寝中の雅美さんを起こす。
「んっ?お客さん?」
寝ぼけ眼で俺を見る雅美さん…………………………ばり可愛いっちゃが!
「お昼」
「えっ?もうそんな時間?」
慌てて店の時計を見る雅美さん。可愛いなあ。
「ステーキ弁当」
雅美さんの前に置く。
「ん、ありがとう。」
雅美さんは上着ポケットからお金を出そうとする。
「別にいいよ」
「だめ!ユノ、手出して」
断る俺の手のひらを包むように500円を置いた。
温かい体温。
きゅんとなる。
「ども」
恥ずかしくて手を素早く引く。
「ユノ、松信のおいしゃん来たら奧通してな」
ステーキ弁当を手にした爺様。
爺様は忍者かも知れない。いつも気配がないもん。
「分かった~」
「写真も今日は撮るけん用意もしとけよ」
「御意」
爺様に頭を下げる。
「かたじけねえ」
爺様は俺のノリにちゃんとついてくるハイパー爺様だ。
ステーキ弁当抱えて奧へと消えていく。
「そっか~今日は10日だもんなあ」
弁当を食べながら雅美さんが俺に話しかけてくる。
爺様が言ってたマツノブさんは一年に一度写真を撮る人。
爺様とあまり年が変わらない。
最近はやたら来てるけどね。
でも、何で毎年撮ってるのかな?
お客さんのプライバシーだから深くは聞かないけど。
前は奥さんも一緒に写真撮りに来てたらしいけど。亡くなった後もずっと………、
思い出か何かあるのかな?
「ユノ」
名前呼ばれて顔を上げる。
「お茶」
ニコッと微笑む雅美さんがお茶を差し出してくれていた。
「ども」
ちょー嬉しいんだけど?
雅美さん直々とか!
有り難く頂くと、ふと影が過ぎり、また爺様かと振り向いた。
俺をじーっと見ているマツノブさんが居た。
い、いつから居た?
何故にここの老人は気配を消して登場するのだろう?
「じいちゃーんマツノブさん」
中に居る爺様に叫ぶ。
「おおっ、来たか、入れ」
爺様の声にマツノブさんは俺に一礼して奧へ行った。
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