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アツアツと……8話
とり天定食は凄く美味しかった。衣サクサクだし、お肉は柔らかいし、つけダレも味が良い。
そりゃマキタキイチも3回の内、2回は食べたくなるよなって思った。
雅美さんも気に入っているようだし……ここ、アキラさんと来てみようかな?と思った。
量も結構あったから満足だった。しかも、料金も安いし、最高じゃんか。
食べたらとりあえずは席を立つ。なんせ、お客が列んでいるから。
会計をして外に出ると「マキタくん送って行こうか?」と雅美さん。
「えっ?悪いです」
マキタキイチは頭と手のひらを交互に振っている。
「いいよ、ユノの友達だもん」
雅美の言葉に、んん?いつの間に友達に?と思った。元クラスメイトなだけなんだけどなあ。
マキタキイチは俺をチラリと見る。何でだろ?
「ユノもいいよね?」
雅美さんに聞かれ「うん」と答えた。すると、凄く笑顔になって「じゃあ、よろしくお願いします」と頭を下げるマキタキイチ。
俺は助手席に、マキタキイチは後ろ。
「バスか何かで帰るつもりだったの?」
シートベルトをしながらに聞く雅美さん。
「はい、少し歩けばバス停ありますから」
「ああ、そう言えばあったねバス停。僕は自転車で来ていたからバスの存在忘れていたよ」
「学生時代?」
俺はシートベルトしながら聞くけれど、上手くシートベルトがハマらない。
「貸して、ほら」
雅美さんは俺から留め具部分を取るとカチンと止めた。
「仲良いですよね。お兄さんと川畑」
「そう?」
金具を止めたら雅美さんはエンジンをかける。
「ねえ、マキタくん、川畑じゃなくてユノって呼んであげてよ。呼ばないと友達に昇格できないよ?僕は雅美でいいから」
「ちょ!!なにそれ!!」
俺は驚いて雅美さんを見る。
「ユノはもっと同世代の友達作らなきゃダメだよ」
「……別に不自由しないし」
どこかいくならアキラさんが居るし、話し相手ならじい様や雅美さんがいる。わざわざ友達は作らない。
「ちょ!酷い!」
後ろからマキタキイチが叫んでいる。
「ほら、ユノもキイチくんって呼んだら?キイチってどう書くの?」
「中井貴一と同じ字です」
「そうかあ、よろしくね貴一くん」
雅美さんは上についているミラー越しにマキタキイチに挨拶をしている。
中井貴一って……誰だっけ?俺はこっそりとスマホで検索をかけた。
あ、知ってる人だ……CMとか出てる人。可愛い女優さんと出てる。
マキタキイチのキイチは貴一なのか……マキタ……あ、牧田貴一だ!思い出した。教科書に名前書いてあった。
「川畑……えーと、ユノ?」
真後ろから呼ばれので条件反射で「はい」と返事をしてしまった。
「良くできました。はい、じゃあユノ、貴一くんって呼んで」
「はあ?いま?」
「今呼ばないでいつ呼ぶの?」
雅美さんは……実は言い出したらきかないのだ。顔に似合わず頑固。よって、その迫力に負けて「貴一くん」と呼ぶ羽目になった。
「貴一でいいよ!!」
嬉しそうに後ろから顔を出す。
「調子に乗んなよ?」
めんどくさそうに言うと貴一は何故か爆笑した。
「あはは、ユノって面白い」
何が?どこが?どこにヒットした?俺には理解不能だった。
「こんなに面白い奴だったんだな……やっぱ、学生の時思い切って話しかければ良かったなあ」
何がどう、面白く感じたのは俺には分からないけれど、どうしてそんなに俺に拘ってくれるのか、それも分からなかった。
だだの同級生だろ?
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