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アツアツと……9話
貴一を送って行って、店に帰る途中。
「じい様にお土産買って行こう」と雅美さんは左折する。
「じい様のお土産?」
「うん、むっちゃんまんじゅう」
「あーね」
むっちゃんまんじゅう、じい様は好きで食べているのをたまに見かける。写真屋の近くにはお店がないから、そのお店がある地区に行くと必ずじい様は買ってきて食べている。俺も好きだ!姿がたい焼きじゃなくて、ムツゴロウってとこも可愛いし、中が餡子とかもあるけど、ハムエッグなとこ!!マヨネーズ味も最高。
「ユノにも買ってあげるね。仕事頑張ったご褒美」
「え?仕事は仕事で頑張るのが普通?」
「それでも、ユノは凄く頑張ってたよ……それに貴一くんの事も」
「えっ?貴一?」
「そう……友達要らないって顔をいつもしてたけど、さっきはちゃんと笑って話してた。貴一くん嬉しそうだったよ?」
「な、なんすかそれ?」
俺はちょっと動揺した。友達要らないって顔……してたのかな?気付いていなかった。
「貴一くん、ユノと仲良くなりたくて頑張ってた……ちゃんとそれを受け止めたからね!きっと、学校でもユノと仲良くなりなかった人居たと思うよ?現に貴一くんは高校卒業して随分経つのに必死にユノに話しかけてきてたでしょ?きっと、ユノを好きだったんだよ」
雅美さんは俺の頭を撫でた。
「施設の先生もユノに甘えて欲しかったと思うよ?ユノはいい子過ぎて心配だって、先生達言ってたんだ……知らなかったでしょ?」
えっ……心配?それは知らなかった。
心配してたのか先生達。
「あんなに小さいのに大人に気を使ったり空気読んだり……きっと、ここはあの子が安心出来る空間じゃないのかも知れないって」
その言葉に驚いて雅美さんを見る。
「僕とじい様はユノに安心出来る場所をあげたくて……仕事は頑張るけど、ユノは人見知りし過ぎだから……友達とかいたらいいなあって」
「雅美さん……」
「あ、でも、今の僕の言葉で空気読んで無理矢理友達作るのはなしね?ちゃんとユノを大事にしてくれる友達にして、ワガママだけど」
正直俺は……凄く泣きなくなった。
先生達は……俺の空気を読む気持ちを優先させてくれていたのかな?もっと、ワガママとか言って欲しかったのかな?
でも、迷惑かけたら……。
お父さんは……お父さんに迷惑かけたから、俺を置いて居なくなったってずっと思ってて、置いていかれるくらいなら、自分の気持ち言わない方がいいし、ほんのちょっと我慢すればいいって。
ワガママ言ったら嫌われる……。ちゃんと周りの空気読もうって。
それは他人にはワガママだったのかな?
……どうしたら良かったんだろうか?
「ユノ!」
雅美さんがいきなり俺の頭を自分の方へ持っていったから驚いた。
雅美さんのいきなりの行動は……気付かないうちに泣いていたからだった。
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