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アツアツと……10話
涙がしばらく止まらなかった。
雅美さんが気を利かせて人気が無い駐車場に車を入れてくれて、しばらく泣いてしまった。
その間、雅美さんにぎゅっと抱っこされてて、頭を撫でてくれたり、背中をポンポンと叩いてくれたり。雅美さんの胸の辺りに耳があったから、心臓の音がトクトクって聞こえて安心した。
どれくらい経ったか分からないけど、顔をあげると雅美さんが俺を見て微笑んだ。
「落ち着いた?」
その言葉に頷く。
「ユノはね……色々と考え過ぎ」
そう言って頭を撫でてくれる。
「もっと甘えていいんだよ?甘えてくれたら僕もじい様も嬉しいし……きっと、アキラも」
「……はい」
俺は雅美さんに寄りかかっていたけど、身体を起こす。
「でも、泣いてくれるのは甘えてくれてるって事だよね?」
俺の頬に手を当てて親指で涙を拭う雅美さん。
「ユノは泣くと可愛いね」
雅美さんの顔が近付いて、頬にちゅって唇が当たった。
「子供の頃のユノにこうすると泣き止んだんだ?覚えてない?」
そう言われてふと、随分前だけど、何かで泣いてしまった俺を初めはじい様が慰めてくれていたけど、いつのまにやら雅美さんにバトンタッチされてて、今みたいに抱っことかしてくれてたな。
「ちょっと」
ほんのちょっと思い出した。
「あの頃からあまり泣かなかったもんねユノ」
雅美さんは次はおでこにちゅって。
それは全然嫌じゃなくて、懐かしい感じがした。
だから、つい、目をとじてしまった。
すると、唇にふにっとやわらかいモノが当たった。
目をあけると、雅美さんの顔が近くにあって……それがキスだってわかった。
そして、また、キスされた。
これはきっと、慰めてくれている延長……。
俺はまた、目を閉じた。
雅美さんの手のひらが頭の後ろにあって支えられているみたいで……。軽く当たっていたキスは何回か続いた。
そして、「お腹空いてない?」と声をかけられ。
目を開けるといつもの優しい雅美さんで、「うん
」と返事すると「いい子でここで待ってて」と雅美さんは車を降りてどこかへ歩いていった。
1人になって……ふと、唇に当たった雅美さんの唇の感触を思い出す。
やわらかくて、そして優しくて……とても熱かった気がした。
◆◆◆
「お待たせ」
しばらくして戻ってきた雅美さんは紙袋と飲み物を抱えていた。
「ユノはコーラでいい?」
雅美さんにコーラを渡されて受け取る。
紙袋の中身はむっちゃんまんじゅうだった。
「先に食べていいよ」
袋の中から1つ貰って食べた。相変わらず美味しい。
雅美さんは「さて、帰ろうか」と俺の頭をクシャクシャと撫でると、エンジンをかけ……車を走らせた。
◆◆◆
「随分、ゆっくりやったな」
店に戻るとじい様が店を閉める寸前だった。
えっ!!マジで!!と思った。
幼稚園を出たのは3時くらいで……そうだよ、いつのまにか外は暗い。
駐車場にいた時間が長かったんだ。
「雅美さん、ごめんなさい」
雅美さんの服を引っ張る。
「ユノ、さっきの事は内緒ね」
ニコッと笑う雅美さん。頷くしかない。
「うん、ちょっと、ユノとドライブしてた、これ、お土産ね」
雅美さんはじい様にむっちゃんまんじゅうを渡して、じい様に代わり閉店の準備を始めたので俺も慌てて手伝った。
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