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ザワザワと……
*******
「アキラ帰ってるみたいだね」
家に明かりが灯っているのが見え、雅美さんは安心したように車を停めた。
「ありがとう」
そう言いながら降りる俺に、
「相談、いつでも乗るよ」
と声を掛けてくれる雅美さん。優しいよね。
「うん」
返事をして、ドアを閉めた。
走り去る車が見えなくなるまで見送って、家へと歩く。
明かりが灯る家に帰るのって、どうしてこんなに嬉しいのだろう?
家が近付くと良い匂いが。
アキラさんってば!
急ぎ足で玄関まで行き、ドアを開け、
ただいまと何時もより大きな声で言ってみる。
誰か居ると分かりきっているから声はデカくなる。
「ユノ」
アキラさんが急いで玄関へ来てくれた。
へへっ、何か嬉しい。
「ただいまアキラさん」
「おかえりユノ」
アキラさんは微笑む。
靴を脱いで上がったら、直ぐにぎゅーっと抱きしめられた。
「ユノの匂い」
そう言って顔を寄せる。
「アキラさん、今日はビックリさせてごめんなさい。」
「いい、勝手にユノっち思ったとは俺やし」
「お客さん怒って無かった?」
「ううん、何かノリが良い兄ちゃんでさ、怒ってなかったよ。で、松信さんは?」
アキラさんに聞かれ、俺は食事しながら松信さんの話をした。
*****
「ユノは明日も見舞いに行くと?」
食事の片づけをしながらアキラさんは聞いてくる。
「うん。……じいちゃんに息子さんの話聞こうと思って」
そう答える俺は微力ながら手伝い。
「…でも、家族の事ぞ?他人が立ち入って良かとやろうか?」
そんな風に聞かれると、答えに困ってしまう。
仲良くなって欲しい。
そう思ったら余計なお世話さえもしたくなる。
黙り込む俺に心配したのか、
「いや、あのさ、うん、出来る範囲でやれば良いよ」
と慌てて付け加えた。
「うん」
と笑顔で返事を返すとアキラさんはホッとした顔をした。
*****
そして、お風呂に入ろうと言われ、雅美さんに相談しようとした事を急に思い出し、ドキドキしてしまった。
何もされないんだけど、妙に意識してしまう俺って何?
もしかしてされたい? とかまで考える始末。
アキラさんは何時も通り、俺の髪を洗い、身体も洗ってくれた。
そして湯船にアキラさんに抱っこされながらつかる。
鼻歌混じりのアキラさんはいつも、ジブリか演歌。かなり、両極端。
「あ、そうだ、ノリが良い兄ちゃんの客な長崎県民でさ、美味しいチャンポン屋とかトルコライスの店とか色々教えてくれたったい。今度、長崎に遊びに行かん?ハウステンボスとか」
「アキラさん、ハウステンボスって佐世保だよ、長崎から1時間半は離れてる」
「えっ?そーと?」
驚くアキラさん。
えっ?未だに長崎市にあると思っている人が居たよ。
「長崎は坂ばっかだよ」
俺がそう答えたのは長崎生まれだから。
「いいやん、ユノが育った街見たいったい!」
アキラさんはぎゅーっと俺を後ろから抱きしめた。
「うん。アキラさんと歩いてみたい」
そう答えるとアキラさんは更にぎゅーっと抱きしめてきた。
「約束ぞ?」
「うん」
遠出ドライブ決定の瞬間。
******
さて、ドキドキの睡眠タイム。
でも、アキラさんは俺より先に寝てしまった。
もちろんパンツ1枚で。
アキラさんの寝息が聞こえ、ホッとしたようなガッカリしたような。
本当にエッチな事はしないんだな。なんて思いながらアキラさんの寝顔を見つめる。
ちょっと無精髭があって、それがまた似合っていて、
ピアスも……
何個開けてんのアキラさん?
俺も開けてるけどさ。
こうやってマジマジと見るとアキラさんはイケメン。
美容室、女性多いもんなあ。
女性客とはどんな話するのかな?
きっと、アキラさんファンの女の子いっぱい居るよね?
ちょっと、 何か嫌な気分になってしまってアキラさんの胸に顔を寄せて目を閉じた。
余計な事を考えないように。
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