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あらあらと……11話
「何しよると?」
「……お使いの帰り」
「お使い?ああ、写真屋の?」
「うん」
「もう帰ると?」
「……お腹空いたから何か食べようかなって」
俺はキャナルシティと呼ばれる商業施設にいた。
写真屋から歩いて少しのとこにあるからたまに服を買いに来たり暇つぶしにきたりしてる。
俺がそう返事すると貴一の目がキラッとしたような気がした。
「え、じゃあ、ピザ食べん?」
「ピザ?」
「2階にあるやん?ピザ食べ放題」
貴一が言う食べ放題は知っているけれど入った事がなかった。気になってはいたんだけどね。
……てな、わけで何故か貴一とピザ屋へ。
断る理由もないしな。
前払いして、席につく。
平日でも、やはり人は結構いる。
土日は人が多いから俺は来ないんだけどね。ゆっくり見れないし、食べ物屋には行列だし。
ピザの種類も結構あるし、サイドメニューはサラダとポテトやパスタ。美味しそうなものが並んでる。
ピザ2枚とポテトとサラダを少し取って、飲み物も……席に戻ると貴一は結構な量を皿に盛っている。
「そんな食うん?」
「ユノは少食やね?」
「後でまた取りにいく」
俺は座るとピザを食べる。
うまっ!!!
宅配ピザは高いから頼まないからピザを食べる機会があまりなかったもんだから、美味いと感じた。いや、失礼やな……機会なくても美味い。
食べてる間、貴一が会話を振ってくれるから無言にならずに済む。俺は気が利いた事が言えないから雅美さんやじい様、アキラさんくらいとしか会話が続かない。
写真屋にくるお客さんとは接客だからそこそこの会話は出来る。あと、商店街の人達。
でも、良く考えると向こうから会話振ってくれるからそれに答えるだけなんだけどね。
貴一は話していると話しやすい奴だった。
俺のしょうもないリアクションにもちゃんと反応するし、どんな言葉も拾ってくれる。すごいなあ。
「ユノ、休みの時は何しよると?」
「えっ?写真撮ってる」
「どっか行くの?」
「たまーに海とか……」
「1人で?」
アキラさんが休みの時は買い物とか映画とか……後はエッチ……くっ!!思い出して照れてしまう。
「1人」
「お兄さんは?ほら、雅美さん」
「雅美さん?あ、だって、休み一緒やなかったりするし、写真は1人の時しか撮らない」
「なんで?」
「写真撮りに夢中になるから、放置してしまうし、つまんないと思う」
「……俺に写真の撮り方教えてよ」
「へ?」
貴一の突然の申し出に一瞬、何を言われたのか分からなかった。
「ユノの写真俺好きって言ったやろ?どうやったらあんないい写真撮れるとかなあって」
「カメラで撮れば撮れるけど?」
「……ふっ、」
俺の言葉の後に貴一は笑い出す。
「あはは、やっぱ、ユノ面白い!次、いつ撮りにいくんよ?」
貴一に聞かれだいたいの日にちを言うと「ユノ、携帯出してよ」と言われたので出すと「番号交換しよ?」と言われた。
こうされると断れない。
上手いな!と思った。
そして、番号を交換して何故か貴一と写真を撮りに行くハメになった。
◆◆◆
「えっ!貴一くんと遊びにいくの?」
写真屋に戻り貴一の話をすると何故か雅美さんが嬉しそうな顔をした。
「写真……撮りに行くだけだし」
「友達とどこか行くってユノ!!良かった」
雅美さんは拍手する勢いで「なんでそんな喜ぶの?」と不思議だった。
「だって、人見知り激しいでしょ?ユノ!僕達みたいなオジサンとばかり一緒にいたらダメだし、同じ年の友達作った方がいいんだって」
「雅美さんはオジサンじゃない!」
そこは突っ込む。
アキラさんもそうだし、全くオジサンではない。
「じい様にも報告するね」
「え!!なんで!!」
雅美さんの浮かれ具合はもう初めて友達が出来た幼稚園児のお父さんみたいで……笑ってしまった。
あ、でも……貴一って友達なのかな?
俺は友達居なかったから友達がどういうものか分からない。
雅美さんは貴一を友達だと思ってるみたいだけど、どうなのかな?
うーん!悩んでも仕方ないのでとりあえずは貴一と写真を撮りに行こうと思う。
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