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あらあらと……14話

◆◆◆ 玄関を開けると「おかえり」と雅美さんとアキラさんが出迎えてくれて驚いた。 「えっ?なんで?2人とも仕事は?」 アキラさんの店は20時までやっているし、雅美さんもまだ店に居る時間のはず。俺が帰ってきたのは19時過ぎ。 「じーさまが用事があるから早く閉めたんだよ」と雅美さん。 「今日はめずらしくお客さんの予約が18時で終わったからさ……」とアキラさんがそれぞれ家に居る理由を教えてくれた。 「そうなんだ……あ、ただいま」 俺は靴を脱いで家に上がる。 「夕飯出来てるよ」 雅美さんがニッコリ微笑む。 「まーの作る料理美味いからな」 アキラさんはさり気なく俺が持っている荷物を持ってくれた。 「あ、お弁当……美味しかったです」 何だか照れくさくなって声が小さくなってしまった。だって、皆に送り出されたから。 「そっか、良かった」 アキラさんは俺の頭をグリグリと撫でる。 「ユノ、楽しかった?」 雅美さんもニコニコしながら俺に聞く。その時、どうして2人がここに居るのか分かった気がする。 きっと、どうだったのか気にしてくれていたのだ。 俺ってどんだけ?と自分でも笑いたくなった。 「うん、楽しかった」 本当に楽しかったから笑顔で答える事が出来た。友達とどこかいくとか今までなかったし、楽しいとか羨ましいとかそういう感情さえ無かったのだ。 でも、今日は本当に楽しかった。 「そっか!良かった」 2人が俺の返事で凄く嬉しそうな顔をしたので「なんか……幼稚園とかで初めてのお泊まり保育を心配した親みたいだよ?2人とも」と照れ隠しに冗談を言った。 「あはは、どっちがお父さんだろ?まーが料理とか家事が上手いからお母さん?」 アキラさんもその冗談に乗ってくれて3人で笑った。 夕飯は3人で食べた。 やっぱり誰かと食べると楽しい。楽しかったんだって思い出した。 小さい頃、お父さんとご飯食べるのが楽しかった。お箸をテーブルに用意したり、お皿運んだりするのが俺の役目だった。 「ありがとう」って撫でられて褒めて貰うのが嬉しかった。 でも、それが出来なくなって忘れてしまっていた。 誰かと一緒に居るのが楽しいって事を。 ◆◆◆ 「お風呂用意出来てるから入っておいで」 雅美さんが食器を片付けながらに言う。 「えっ?俺が片付けるよ」 慌てて立ち上がると「ユノ、疲れただろ?片付けは俺とまーでやるから入っておいで」とアキラさんにも言われて風呂へと向かったのである。 本当、あの2人は保護者っぽい。そう考えると何だか楽しくなった。 ◆◆◆ 「ユノ……寝っちゃってる」 ふと、声が聞こえた。 あれ?俺……風呂に入ってるよね? 目を開けようとしたけど、マブタが重い。 誰かに抱き上げられた感じがするけど、何だろう?凄く気持ち良くて、凄く幸せでそのまま……。 ◆◆◆◆ 「あはは、マジ?ユノ、風呂で寝ちゃったの?子供かよ!!」 俺の目の前で貴一が爆笑している。 「うるせえ!」 俺は笑い続ける貴一を睨む。 商店街の中にある安いラーメン屋に貴一と昼飯取りにきたのだ。 さっき、ふらりと写真屋にきた貴一が「現像して欲しい」と昨日撮った写真のデーターを持ってきたのだ。 コンビニでも出来るのにって言うと写真屋の方が絶対に綺麗だ!と言うので雅美さんにデーターを渡した。 「ユノ、2人でお昼休憩に行っておいでよ」 雅美さんがニコニコして俺を見る。 「えっ?いいよ、貴一だし」 「ひでえよ、ユノ……」 俺の言葉に拗ねる貴一。 「お友達は大事にしないと」 ニッコリ微笑む雅美さん。もう!本当勘弁して?と俺は思う。 「何や、ユノの友達か!あ、昨日、一緒に出掛けた子か」 奥からじい様まで出てきた。 「こんにちは」 貴一が頭を下げると「そーか、そーか、ユノと仲良くしてくれてありがとうな」とじい様が貴一に礼を言い出したので「わ、分かった!ラーメン屋行こう」と貴一を引っ張って写真屋を出た。 で、昨日の夜の出来事を話した。 俺は2人にすすめられて風呂に入ったはいいが疲れていたのか風呂の中で寝てしまったのだ。 それを見つけたのが雅美さんで、俺が風呂からずっと出て来ないから覗きにきたんだってアキラさんに朝から聞いた。 運んで服着せたのはアキラさん。 雅美さんでなくてホッとした……だってアキラさんには裸見せてるけど、雅美さんには恥ずかしいもん。 「ユノ、本当、可愛い」 まだ笑う貴一。しつこい!! 「笑いすぎだからな」 文句を言うとごめんごめんと謝られた。 「でも、ユノは愛されてるね、おじいちゃんも優しそうだし、お兄さんも優しいよね」 貴一の言葉にちょっと嬉しくなった。そう見えるのかな?2人に愛されていると見えるのかな? だったら素直に嬉しい。 「うん、優しいよ」 嬉しくて素直に言えた。 「その優しいお兄さんとアキラさんも誘ってさお祭りいかない?」 「は?祭り?」 「俺の知り合いがテキ屋やってて、店出すんだ、俺も手伝うんだけど、食べにきてよ、美味しいから」 「何の店?」 「はしまき」 「はしまきか、美味しいよね」 「休憩の時とか一緒に回れるし」 貴一はニコニコと祭りの話を続ける。 祭りか……俺は祭りは苦手だった。 「聞いてみる」と一応、返事した。 楽しそうに話す貴一に即答で行かないとか言えないから。

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