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あらあらと……17話
「貴一、友達多そうなのに」
「知り合いはいるよ?でも、こうやってどこかに一緒に行く友達はいないかなあ?」
その言葉は本当に意外だった。
「俺はいいの?一緒に行ったりして」
「ユノはいいんだよ!」
俺の言葉に必死に返す貴一がなんか、嬉しいというか、なんて言うか……こういうのは初めてだからくすぐったい。
こういう時ってなんて返せばいいんだろう?気の利いた言葉を返せない。ただ、「次、またどっか行く?」と聞いてしまった。
貴一は「うん!行く」と子供みたいな顔で返事してくれて、ちょっと照れくさかった。
「ユノ、うなぎ釣りだってさ、釣ると蒲焼にしてくれるみたいぞ?」とアキラさんの声。
うなぎ釣り?と周りを見ると金魚すくいの隣にうなぎ釣りを見つけた。
大人も子供も集まっている。
間をぬって見てみるとニョロニョロしているのが沢山。
なかなか、釣れないみたいで苦労しているようだ。そりゃ必死になるよね、うなぎだもん。
アキラさんが挑戦するみたいだ。お金を払っている。
「ユノ、うなぎば食わせてやるけんな」と俺を見て意気込みを見せた。
「お前、釣れた事ないくせに……」
ボソッと雅美さんの声が聞こえて笑ってしまった。
結局釣れなくて貴一が笑うと「じゃあ、貴一、やってみろ!」と貴一まで巻き込むアキラさん。
でも、貴一はすんなりと釣り上げた。
俺とアキラさんと雅美さんは一瞬固まる。
「俺、釣り得意なんだよ!夜釣りとか行くんだ」
貴一はドヤ顔。
「へえ、釣りとか俺やった事ない」
「じゃあ、今度いく?写真教えて貰ったからお礼に釣り教える」
釣り……じい様魚好きだよなあって思い出して「行く!」と返事をした。
うなぎは店の人が蒲焼にしてくれた。
食べながらアキラさんが「釣り行くなら俺も!」と参加してきた。「まーも行くだろ?」と雅美さんを見る。
「何でお前はそうやって巻き込もうとするんだよ」
「いいやんけ」
なんとなく、2人の関係性が見えてくる会話。いいなあって思う。
蒲焼食べた後は金魚すくいをやりたかったけど、生き物は死なすと可哀想だなって見てるだけにした。
「やりたいの?」
雅美さんに聞かれたけど首を振った。
「めんどうなら一緒に見たらいいよ?やったら?」
「でも、持ち歩くと金魚死んじゃいそうだもん」
「そうだね、じゃあ、帰り間際にやる?そしたら車に乗ってすぐ帰ればいいよ」
「でも、金魚入れる水槽ない……」
「昔、じい様が金魚飼ってたから水槽はうちにあるよ?飼い方もじい様知ってる」
「ほ、本当?」
じゃあ……やろうかな?と思った。
小さくて可愛い金魚を見て、赤い子とかいいなあって思った。
その後は貴一と皆で少し回ってりんご飴とかイカ焼きとか結構食べまくった。
貴一が休憩終わるからって戻って行った。
次は夜釣りかな?楽しみだな。
3人でしばらく見て回ってじい様への土産も買ってそろそろ帰ろかなってなった時に「金魚すくいしないの?」と雅美さんが覚えててくれた。
「う、うん」
俺は金魚すくいの場所へと戻った。
「ユノ、金魚飼いたいのか?」
アキラさんに聞かれて「あの赤い子とオレンジ色の子」と2匹を指さす。
「頑張れ」とアキラさんはお店の人にお金を払った。
俺が払うって言ったけど「いいから、ほら、ちゃんと狙えよ」って頭をポンポンされた。
金魚すくい初めてやったけど、難しい……。直ぐに逃げられてしまった。
でも、雅美さんが俺の横に座りひょいひょいと、俺が欲しい子2匹を捕まえた。
「すごい!」
「まーは金魚すくい得意なんだよ、小学生の時から高校までかな?金魚飼ってたし」
俺が感動するとアキラさんがそう教えてくれた。
あれ?じい様が飼ってたんじゃ?
雅美さんをみると「連れて帰っていたのをじい様が飼ってたんだよ」と笑った。
「はい、ユノ」
雅美さんは俺に金魚を渡す。
透明な袋の中で泳ぐ金魚は凄く可愛い。
「名前……後でつけよう」
可愛い名前をつけてやろう。と思った。
金魚をチラチラ見ながら歩く。
大丈夫かな?って……。アキラさんと雅美さんは俺の前を列んで歩く。
仲良さそう。っていうかいいんだろうけど。
2人ともイケメンだからすれ違う女の人達が振り返ったり、顔を赤らめたり……カッコイイって騒いだり。
女子高生なんてスマホ構えてる……いや、それ盗撮で犯罪だからな!と思っていたら気づいたアキラさんが手のひらでダメだよって意思表示していたから写真は撮らなかったみたい。
芸能人か!!と突っ込み入れたい。
ふと、子供が泣いている声が聞こえた気がして周りを見た。
すると、男の子が泣きながら歩いている。
ああ、迷子かと男の子に声をかけたらちょっとびっくりした顔をしたけれど、どこか安心した顔もした。
近くにいた屋台のお兄さんに迷子みたいだと言うと「ほんと?名前言えるか?誰ときた?」と優しく男の子に聞いている。
「迷子センターに連れてくよ、ありがとうお客さん」と連れて行ってくれた。
ホッとして周りを見るとアキラさんと雅美さんの姿がない。
しまった……今度は俺が迷子だ!!
まあ、今のご時世文明の力のスマホがあるからとポケットを触る。
んん?あれ?スマホは?
背中に背負ってたリュックも見てみるけど、スマホがない。
あれ?どうしたっけ?と考える。あっ、そうだ……テーブルの上だ。
やってしまった。
テーブルの上に置きっぱなしにしていた。
写真屋でも車の中でも気にしていなかったから気付かなかった。
ショックだけど、歩いていれば出会えるだろう。
駐車場に行けば……って考えたけど、やばい。場所覚えていない。
来る時は話ながらきたし、俺はこの場所に来た事がない。
福岡に住んで何年か経つのに行動範囲は意外と狭かった。
まあ、お金もあるし……自分で帰ればいいかあ。大人なんだし。
色々と考えをかけ巡らせた。
小さな子供じゃないんだから。
そうだ、貴一の手伝っている店の場所は覚えているから貴一に電話借りれば……。と振り向いて時に目眩がした。
あれ?と思い、フラフラしながら座れる場所を探す。
誰にも迷惑かけない場所。
石段を見つけた。周りには人影がまばらだから迷惑にはならないだろう。
そこに座ると何故か胸が苦しくなってきた。
何で?
息を整えようと必死になる。凄く不安で凄く怖くなった。
どうして、こんなに不安で怖いのだろうと考えて思い出した。
俺が施設でお祭りの日に熱が出た理由と祭りは大きくなっても行かなかった理由。
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