57 / 133

そよそよと……9

「ご飯食べてないだろ?」 雅美さんの質問に俺は食べていない事に気付いた。 「う、うん、寝ちゃったから」 「アキラが作った昼ご飯あるから温めてあげるね」 ニコッと微笑む雅美さん。ああ、天使の微笑みだ。 「あ、俺がやります」 俺は起き上がるとベッドから降りようと立ち上がる。 そして、思い出す。捻挫していたのを。 「いっ、たあ!!」 ズキンっと痛みが走りよろける。 「ユノ!」 雅美さんが俺を受け止めてくれた。 「もう!馬鹿ユノ!」 ガシッと抱きとめてくれたから、フワリと雅美さんから甘い香り。 あ、シャンプーかな? 「持ってきてあげるから大人しくしてて」 ベッドに座らせられた。 「……ちゃんとテーブルにいきます!」 ここまで運んで貰うのは申し訳ない。 雅美さんは、ふふっと笑うと、「しょうがないね、ユノは」と手を貸してくれた。 「うーん、やっぱり抱っこしていい?抱っこ!」 「えっ?抱っこ?」 聞き返すと、身体がふわっと浮いた。 「こっちが負担かからなくていいよね」 柔らかく微笑む雅美さん……… ちょ!!!は、恥ずかしいんですけど!!! 「軽いねユノは」 雅美さんはアキラさんと比べると線が細い。 なのに、結構力持ちなんだよね。 意外だ。 抱っこされて、テーブルまで運ばれた。 そして、イスに座らせて貰う。 「食べたら病院ね」 「えっ?!」 「なに?その露骨に嫌そうな顔は」 そんな嫌そうな顔したの俺? 「………だって」 だって、病院は嫌い。お金かかるし、消毒の臭いが嫌い。 「松信さんのお見舞いだよ?ユノに会いたいって」 「えっ?本当?」 それなら行きたい!! 「ぷっ、ユノって本当、顔に出るね」 雅美さんは笑い出す。 「……そんな事ない」 はずだよ、……そんなに俺って顔に出るの?アキラさんにも散々言われるもんな。 「じゃあ、ご飯食べて、着替えような。手伝ってあげるから」 そう言って、雅美さんはご飯を温めてくれた。 ◆◆◆◆ …………また、騙された。 確かに松信さんの入院している病院。でも、忘れていたけど、腕を見て貰ったのもこの病院だった。 よって、診察室にいる俺。 捻挫の足も診てもらった。 「ユーノ、眉間にシワ」 足が痛いから診察室まで雅美さんがついてきていて、ちょっとムスっとしている俺の眉間をグリグリと押す。

ともだちにシェアしよう!