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そよそよと……10

「顔に嘘つきって書いてあるよ」 雅美さんは優しく微笑む。 うっ、マジで顔に出るのか俺は…… 「診察終わったらお見舞いに行こうね」 雅美さんは俺の頭を撫でる。 まるで小さい子供みたいだ。 ………頷くしかないじゃん? ◆◆◆◆◆ そして、診察が終わり松信さんの病室へ行った。 「なんやユノ、大丈夫かとや?」 爺さんが珍しく心配そうな顔を見せた。 「うん」 頷くけど、雅美さんに支えされてるから本当にうんって言っていいのか分からないけどね。 「大丈夫かい?」 病室にいたもう一人の男性が声をかけてきた。 松信さんの息子さん。 ………良かった。仲直りできて。 「はい。大丈夫です」 俺は笑顔でそう言って、松信さんに「あの、これ、俺が撮った写真です」って風景やら動物やらを撮った写真を小さいアルバムにしたから、それを渡す。 松信さんは無言で受け取ると、パラパラめくり、夕焼け空の写真で手を止めた。 「こん、写真、もろうて良かか?」 ………しゃべった。 いきなりだったので、俺は頷くだけ。 松信さんはその写真をじっーと見つめて、 「坊の写真は………ガキんころば思い出す。貧しくて、飯もよう食えん、学校もいけん……けど、空ば見上げるとさ、ああ、生きてるだけで良かって思うとさ………あん時の夕焼けもこげん、オレンジ色で綺麗やったな」 こ、こんなに話したの初めて聞いた。 しかも、褒めてる?褒めてるよね? 「マツノブしゃんはユノの写真好いとーけんな」 爺さんがニヤニヤしながら俺をみる。 「あ、ありがとうございます」 俺は照れくさかったけど、頭を下げた。 そんな風に何かを思い出す写真なんだな、俺の写真って………… やばい!!めっちゃ嬉しい。 「ユノ、顔真っ赤だよ?夕焼けのせいかな?」 ニヤニヤする雅美さん。 確かに西陽が当たる。 うん、夕焼けのせいだよ!! 少し話して俺は強制的に病室から連れ出された。 まあ、怪我してるしね。 「良かったネ。松信さん喜んでくれて」 車に乗り込むと雅美さんがそう言った。 「はい」 うん、凄く嬉しい。 「あっ、」 車を走らせようとした雅美さんが正面をみて声を上げる。 なに?って思ってたら、 「あの子ユノの同級生」 と正面を指さす。 顔を向けると、手を振りながらこちらに向かってくる奴がいた。 確か………マキタキイチ? 助手席の窓ガラスを叩くマキタ。 雅美さんが気を利かせて窓を開ける。 開けなくていいのに。 「おっす、川畑&お兄さん」 ニコッと笑うマキタ。 「はい。こんにちわ」 雅美さんは笑顔で挨拶。 「通院してるんだろうな?ってお前捜してたんだぜ?」 「えっ?なんで?」 「なんで?………お前冷たい。だって、同級生だぞ?話したいじゃん?」 「話す事ない」 「おーまーえーなあ」 マキタはそう言った後に何故か笑った。 「いいや、顔覚えてくれてたみたいだから。でも、また見かけたら声かけるからな」 マキタは変わっているようだ。 車から離れると手を振って病院へと入って行った。

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