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そよそよと……11
「あの子、ユノと仲良くしたいんだね」
「はい?なんで?」
雅美さんの言葉に素早く反応した俺。
「高校の時からきっと、仲良くしたかったんだと思うよ?そんな感じ」
「………どんな感じですか?俺にはサッパリ?」
「ユノに顔を覚えられてて嬉しそうにしたから」
………益々わからない。
何で?俺と仲良くして何か得するんだろうか?
俺がそんな事を考えている間に雅美さんは車を走らせる。
「嘘ついちゃったから、お詫びにユノの行きたい所連れていってあげるよ。どこがいい?」
……海はこの前行ったからなあ。
どこでもいいとか言ったら雅美さん困るよね。
「もう少し早い時間だったら九重か、大観峰くらいまで連れて行ってあげれるんだけどな」
九重に大観峰………どっちも県外だよ、雅美さん。
でも、いいなあ。豆田町とか行きたいなあ。
「門司港とかも遠いですね」
「だね~、夕方だし、あまり遅くなるとアキラが心配する」
アキラさん………そうだ。大人しくしてろって言われたんだ。
じゃないとエッチお預けって………
ここは大人しく帰るかな?
「あ、近場でいいとこあった」
雅美さんはそう言うとどこかへ車を走らせた。
◆◆◆◆
連れて来られたのは海岸。
都市高速から降りて直ぐの場所。
「ごめん、結局海で」
エンジンを切りながら言う雅美さん。
「いえ、海好きだから嬉しいです」
「……ふふ、ユノはイイコだね」
雅美さんは笑うと俺のシートベルトを外してくれた。
夕暮れの海は物凄く綺麗で好き。
太陽が海に沈むって子供の頃、本気で思った。
凄く小さい頃。
まだ、あの人………と暮らしていた頃の微かな記憶の中に、夕暮れの海の景色がある。
「お父さん!!太陽が海に入っていくよ、太陽大丈夫と?」
そんな事を言った。
「……可愛いこと言うなユノは太陽は大丈夫だよ?明日もちゃんと空にあるから」
頭を撫でてくれた記憶。
その人の顔はあまり覚えていない。
ただ、その人はまだ10代で……20歳にもなっていない若い父親だった。
仕方のない事かも知れない。
自分が生きていくのが精一杯のまだ子供。
今の自分よりも若いんだから。
置いていかれても仕方のない事だよな。
………恨んではいないけどさ。
たまに夕暮れの海はせつなくなる。
そして、ふと、松信さんの言葉を思い出した。
あの時の空に似ている………
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