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そよそよと……12

確かにあの写真の夕暮れの空はあの時みた夕暮れに似ている。 空は毎日違う。 夕暮れも毎日違うのに………空が似ている。 松信さんが前に言っていた誰にでもある切ない空………ああ、この事かあ……… 太陽が沈んでいく。 俺はカメラを手に車から出た。 砂浜って歩きにくい。 「ユノ、待って!」 雅美さんが慌てて車から降りる音が後ろから聞こえた。 バタンとドアが閉まる音が聞こえた時に海側から風が吹いて砂を舞い上げた。 舞い上がった砂が俺の方に…… 「ユノ」 雅美さんがいつの間にか俺の側に来ていて、風から俺を守るように抱きしめられた。 風が止んで、「ユノ、大丈夫?」って声が聞こえたけど、目が痛い。 「う~~、砂入ったあ」 目をゴシゴシと擦ろうとする腕を掴まれた。 「擦っちゃダメだろ!車に戻ろう」 肩を抱かれたけど、カメラ!!手にカメラがない!! 「カメラ!!」 「えっ?カメラ?……あ、あった」 雅美さんは下に落ちているカメラを拾い上げたようで、「ほら、カメラ大丈夫だから」って車に連れ戻された。 「カメラより自分だろ?ユノのばかたれ」 雅美さんはハンカチで俺の顔や髪にかかる砂を落としてくれた。 目の中の砂は痛くて涙が出たから外へ出たと思う。 「目、開けれる?」 そう聞かれて目を開けると………ちかっ!!! 雅美さんの顔が近い!! 涙袋辺りに雅美さんの指の感触。その場所を下げて目の中の砂を確かめてくれてるんだろうけど、近いいいい!!! 息がかかるくらいの近さ。 雅美さんはやっぱり綺麗だと思ってしまう。 「大丈夫みたいだね。でも、目がウサギみたいに真っ赤」 顔が離れて、頭を撫でられた。 ウサギ………… 「ユノは泣き虫だなあ。あんまり泣くとウサギになっちゃうぞ?」 突然脳裏に誰かの声………… あの人の声? ああ、そうだ。俺が泣くとウサギになるって言われてた。 「ちょ、ユノ!!」 驚くような雅美さんの声にビックリして、顔をみた。 「まだ、砂入ってるのかな?」 雅美さんの手のひらが頬にきて、指先が何かを拭う仕草を感じる。 もしかして、泣いてるの?俺……… 「ユノは泣き顔可愛くて困るよ……甘やかしたくなるから」 雅美さんの顔が近づいてきてチュッって頬に軽くキスされた。 「ふふ、しょっぱい」 そう言って笑う雅美さん…… 俺は何でだろう。雅美さんの胸に顔を埋めた。 「ユノ」 雅美さんは直ぐに俺を抱きしめてくれて……頭を撫でてくれた。 優しい手のひらで。 ◆◆◆◆◆ 頭を撫でられるのは好きだ。 懐かしくって、幸せな気持ちになるから。 雅美さんの甘い香りも好きだ。 ふと、目をあけた。 すると、天井が視界に入った。 なんで?俺……ドライブしてたよね?海に居たよね? どうしたっけ? 頭にたくさんのクエスチョン。 「ユノは?」 アキラさんの声が聞こえてきた。 「イイコで寝てるよ?」 次に雅美さんの声。 あ……俺、寝ちゃったんだ。

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