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そよそよと……13
あのまま、寝てしまったの俺?
雅美さんに運んで貰ったんだ………本当、俺って迷惑ばかりかけて。
泣きながら寝るってどんだけだよ?
足音がふたつ、聞こえてきた。
何故か慌てて目を閉じる。
「熱が少し上がっちゃってね、病院から貰った薬あるからユノが起きたら飲ませて」
「マジか……」
2人の会話のあと、額に手の感触。
「本当だ、少し熱い」
アキラさんの声。じゃあ、手のひらはアキラさんのか………。
「計った時は微熱だったんだけど、また上がったかな?」
えっ?俺、熱まで計って貰ってたの?
どんだけ爆睡?
「まー、体温計取って」
アキラさんの声が聞こえたあとに俺の服のボタンが外された。
な、なんか……アキラさんにボタン外されるのはドキドキするかも。
ほら、エッチはお預けとかなんとかね、そんな会話してるわけだから。
脇に冷たい感触。
そのせいで身体がピクンと反応して、つい、目を開けてしまった。
「ごめん、起こしたな」
アキラさんのドアップ。
アキラさん………男前。
雅美さんが綺麗ならアキラさんは男くさいイケメン。
人の顔って同じ整った顔でも違うんだな。
「ユノ、動いちゃダメだよ?熱計ってるから」
雅美さんも視界に入ってきて、なんか俺は2人から押さえつけられているみたいだ。
ピピっと小さな機械音。
「37.6」
「……少しあがっちゃってるな」
……でも、微熱じゃん。
「ん……平気、それくらい」
俺はそう言葉にした。
「平気なわけないだろ?飯くったら薬飲ませるからな!」
アキラさんは俺の額を触る。
本当に平気なのに。
これくらいの熱なら学校も行ったし、施設でも早めに薬飲んで布団にくるまってたもん。
次の日には熱下がってて、なんとも無かった。
でも、こっちに来てから熱出すのって久しぶりかな?
「ユノ、ご飯食べれる?」
雅美さんに聞かれて、
「あんまりお腹空いてない」
と答えた。
「食欲ないのかユノ?」
心配そうに俺を見るアキラさん。
違うつーの、昼ご飯食べたのが遅かっただけ。
「こういう時ってなんだっけ?」
「えっ?桃缶って答えればいいの?」
「まーも熱出したら桃缶だった?」
「ううん、僕は桃アレルギーだからアイスクリームとかプリンとかだったな」
「はあ?何、その洒落とんしゃーな食べ物は!!でも、ユノはアイスとかがいいかな?平成生まれなわけだから」
「何それ?」
ふふ、と雅美さんの笑う声。
「ユノは何なら食べれる?」
雅美さんが俺を見る。
え?いま食べたいもの?
なんだろう?桃缶も好きだよ?アイスも好きだし。
………あ、
「ウイダーinゼリー」
「くっ!!!この現代っこめ!!!」
アキラさんのなんだか悔しがる声にちょっと笑ってしまった。
「そうだね、ゼリーとかもいいね。ウイダーinゼリーないからフルーツゼリーでいい?」
雅美さんは俺の頭を撫でて寝室を出た。
残された俺とアキラさん。
「くそ!!現代っ子はウイダーinゼリーか」
ボソッと呟く声。
何がそんなに悔しいのだろう?とアキラさんを見る。
そしたらアキラさんも俺をみていて、
「大丈夫か?熱、辛いな…」
俺の頭を撫でる。
「………大丈夫、ごめんなさい。俺……迷惑ばっか」
「だから、謝るなって言ってるだろ?」
優しく笑うアキラさん。
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