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ゾクゾクと……
◆◆◆
やっと、不自由から解放される!
お金の心配もしなくていい。
本当、怪我と病気ってお金使うから気をつけないと……。なんて思いながら雅美さんと一緒に戻って来た。
「じい様、病院はもう行かなくていいって」
俺は嬉しくて店に戻るとじい様に報告する。
「そうか、良かったな。写真いっぱい撮れるやん」
じい様がニコニコと笑顔で言ってくれた。
「うん」
「今日は店早よう閉めて完治飲み会ばしようぞ!」
「えっ?」
「あ、いいねえ、それ」
驚く俺と賛成する雅美さん。
「えっ、ダメダメ、ただでさえお客さん来ないのに早く閉めたら」
「何言いよっとや?その客が居ないから店閉めるとぞ?来ないのに開けておくほうが金の無駄だ」
「いやいやいや、」
そうじゃなくて……と思った。
店は7時までで、もしかしたら誰か来るかも知れない……まあ、来ない方が多いけども。
「たまには良いんじゃないかな?ほら、ご飯行くとかあまりしないでしょ?ね?」
雅美さんに優しく微笑まれてしまった。
俺はこの顔に弱いのだ。
知ってか知らずか……頼み事とか今みたいな時に雅美さんは優しく微笑むのだ。
「う……分かりました」
断れなくてオーケーを出す。
「アキラも呼ぼう、大勢が良いし」
「アキラさん……」
雅美さんが言う名前に何故か俺はドキッとしてしまう。
その後、ドキドキ止まらず。
えっ?名前だけで、俺ってドキドキしてんの?
恋に慣れていない中学生みたいだ。
いや、今の中学生の方が大人だろうけど。
心臓の音が雅美さんやじい様に聞こえないかヒヤヒヤしてしまった。
「じゃあ、決まりね!アキラにはユノが連絡するでしょ?」
「へ?あ、はい」
つい、慌ててしまったよ。何だよこの恋する乙女みたいな俺は!!なんか、嫌だ。
雅美さんやじい様には俺の心知られてはいないのに恥ずかしくなって「い、いま、聞いてきます」と外へ逃げた。
おかしくなかったかな?自然だったかな?
俺はまた、余計な事を考えてしまっていた。
◆◆◆◆
アキラさんは仕事かな?
そう思いながら電話をしてみた。
数コールでアキラさんが出て、また、ドキドキしている。
何、このドキドキは?
「もしもし、ユノ?どーした?」
電話の向こうのアキラさんの声。
うひゃあ!本物……当たり前だけど。
「あ、あの、病院行って……それで、もう完治してるって」
「えっ?マジか?良かったな!」
アキラさんの明るい声に俺は嬉しくなる。
「うん、ありがとう……で、それでねアキラさん……」
「うん、どーした?」
「あのね」
耳に届くアキラボイスは俺の心臓をバクバクと早く動かす。
「えっとね、じい様が完治飲み会してくれるって言ってて、それでアキラさんも」
「えっ?マジか?俺が行ってもいいの?」
いいの?って当たり前なのに。
「もちろんです、雅美さんがアキラさんに連絡しろって」
「まーに言われて連絡してるの?」
「はい……えっ、はい、そうです」
「ユノが俺を呼びたいって言うんじゃなくてまーに言われたから?」
えっ?えっ?何それ?
アキラさんの何時もと違う感じに俺はオロオロ……。今までドキドキしてたのに。
「ちが、違います!!先に雅美さんに言われただけで、その、えっと、俺は」
ど、どう答えるのが正解?
えっ?俺、アキラさんに変な誘い方とかしちゃったの?どーしよ?
やばい!!!!
どうして良いか分からなくなってしまった時に後ろから誰かに抱き締められた。
!!!!!
俺はビックリで身体が硬直して声も出なかった。
「ユノ」
耳元に聞こえて来たのはアキラさんの声。
それと同時にアキラさんの香がした。
「アキラさん」
「ユノ」
名前を呼ぶと後ろから名前を呼ばれた。
「なんで?」
「驚いた?時間が空いたから写真屋に行こうとしたら、ユノが出てきてさ、脅かしてやろうとしてたら電話かかってきて、ユノってば凄く可愛いんからさ赤くなったり……いま、みたいに慌てたり」
耳元でクスクス笑われた。
アキラさんってば!!!
「もう!驚きました!」
と文句を言いながら顔だけ振り向くとアキラさんと唇が重なった。
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