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ゾクゾクと……6話

「へへ、二日酔いって歩けないんだ」 俺はもうお酒飲まない方がいいかも。歩けなくなるんじゃ。 「ユノ、掴まって」 雅美さんは俺の身体を引き寄せ、抱き上げた。 「わあ!ちょっと!!大丈夫ですから」 慌てるよ、お姫様抱っことか。 「歩けないでしょ?大人しくして」 雅美さんは怒ってはいないけれど、妙に迫力があって俺は大人しくなった。 お姫様抱っこは恥ずかしいけど、嫌いじゃない。 相手が雅美さんだからかな?身体が近いから甘い香りするし。 俺はその香りがどこからするのか知りたくてクンクンと匂いの元を探した。 「ちょ、ユノくすぐったいから」 その声にハッと我に返った。 「あ、ごめんなさい……凄く甘い匂いしたからどこからかな?って」 「甘い匂い?何だろ?シャンプーかな?」 「香水とかじゃ?」 「つけていないよ」 「でも、匂いしますよ?」 「ユノは犬みたいだね!子犬かな?」 雅美さんは俺を見てクスクス笑う。 犬……確かにクンクン匂い嗅いでるもんね。 「このままベッドに戻る?それともテーブルに行く?」 あっ、そうだ、俺……抱っこされたままだ。 「テーブルにいきたい」 「ご飯食べれそう?無理ならヨーグルトとか食べやすいもの出してあげるよ」 「……食べれます」 「そう、いい子だね」 ニコッと微笑む雅美さん。雅美さんになら子供扱いされてもいいかな?あと、アキラさん……。 アキラさんは何時まで子供扱いするのかな? 「ユノ、ついたよ?」 雅美さんの声で顔をあげるといつの間にかテーブルまで来ていた。 「か、考え事してて」 雅美さんは俺を降ろしてくれて、そのまま俺は座る。 「何?……そう言えば前に相談したいとか言ってたでしょ?それの事?考え事って」 うっ!!雅美さん鋭い。 俺が考えている事を当てるなんてさ。 ……って事は俺はずっと、エッチしてくれない事で悩んでいるって事か……どんだけエロいんだよ、俺ってば。 「今、聞いてあげるよ?」 「うっ……いや、いいんです……たいした事ないから」 「ずっと、悩んでいるんじゃないの?」 「…………」 きっと、呆れられてしまう。こんなエッチな俺の頭の中。 黙っていれば病気が治るように嫌な事や悩んでいる事もいつの間にか過ぎて行っている。今までがそうだったから。 「ユノ……ほら、こっち見て……怒ってないんだよ?」 雅美さんの優しい声で顔を上げた。 「大丈夫だよ」 頭を撫でられた。 「ユノ、泣きそう……不安がらなくて良いよ、話たくないなら話さなくていいし、ユノが楽になるなら話してよ、怒らないし、バカにもしないよ?」 雅美さんは凄い……俺が考えている事を言葉にした。 「……うん、何もないよ」 言える気がしたけれど、言葉にするのが怖かった俺は何も言わなかった。

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