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ゾクゾクと……7話
◆◆◆◆
結局、何も話さないまま、その日は終わって。
アキラさんが帰ってきたので、雅美さんも「またね」と帰って行った。
雅美さんが夕飯も作ってくれたので温めるだけだった。
「ユノ、食べないのか?」
「うん、俺、つまみ食いしちゃって」
でも、俺は食欲がなくて小さな嘘をついた。
アキラさんは小さな嘘に気付かなかったからホッとした。それを誤魔化す為にいつもより沢山話をした。
お風呂も一緒に入って、何時ものように一緒に寝て1日が終わった。
1日がそういう風に終わっていくのが何日か過ぎて……何時もと同じなのに食欲ないって言った日からあまり食べれなくなってしまった。
夜はアキラさんに夕飯作る時につまみ食いしたからって言って少ししか食べなくて。昼間は外に食べに行くって言ってボンヤリと近くの神社で過ごした。
食欲がないというより、胃の調子が悪い……チクチクする。どうしたんだろ?薬飲めば治まるかな?
その日も外へ出て商店街の中のドラッグストアへ行って胃薬を見ていた。
「ユノ」
雅美さんの声にビクッとなる俺。
振り向くと雅美さんが居た。
「最近、顔色悪いし、様子変だからさ」
雅美さんは俺に近付いてきた。
「……ちょっと、胸焼けするから……昨日、食べ過ぎたかも」
へへっと愛想笑いで誤魔化そうとしたが手を掴まれた。
「薬嫌いなユノが薬飲もうってするのは相当なんでしょ?市販の薬より病院!」
そのまま、ドラッグストアから連れ出された。
「ま、雅美さん!本当に胸焼けだけだから、それで病院行くの変でしょ?」
行かなくて良い理由を訴えるが手を強く掴んだまま、雅美さんは歩いて行く。
行き先は駐車場。
病院に連れて行くつもりだ。
誤魔化して逃げようとか考えるけれど、普段優しい雅美さんはこういう時、強引というか……強いというか……妙な迫力がある。
駐車場について、雅美さんの車の近くまで来た時にチクチクしていた胃の痛みがズーンと襲ってきた。
我慢できていた痛みが、我慢できなくなっていて俺はお腹を押さえた。
「ユノ!」
雅美さんは車の助手席のドアを開けて俺を座らせた。
座ると両手でお腹を押さえて身体が丸くなる俺の背中を摩ってくれた。
なんで、こんなに痛いのだろう?さっきまで胸焼けとかチクチクするくらいだったのに。
「病院行くからね!」
雅美さんは助手席のドアを閉めて運転席に回った。
病院行くからって言われて嫌とは言えないくらいに痛くて大人しく従った。
病院で診察してもらうと脱水症状と栄養不足もあるからって点滴される羽目になった。
神経性胃腸炎。
それが診察された時に言われた病名だった。
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