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ゾクゾクと……8話
◆◆◆◆
「ユノ、点滴終わったら帰っていいって」
開いている病室で点滴うけている俺の側に雅美さんが戻って来た。
「……ごめんなさい」
雅美さんを見て、自然に出た言葉。
きっと、俺は迷惑かている。
雅美さんはベッドの横に備えてある丸椅子に座ると俺の頭を撫でた。
「ユノは我慢し過ぎ……ずっと、痛かったんだろ?」
雅美さんは呆れているとか怒っているとかではなく、俺を見て優しく微笑む。
「いつもは弁当とか一緒に食べてたのにここの所、外に出てたからおかしいなって思ってたんだよ……で、今日、出た後をついて行ったらドラッグストアに入るからさ……お菓子かジュースでも買うのかな?って思ったけど、真っ直ぐに薬の所行くから余程我慢出来ないんだなって……ほら、ユノ、薬嫌いだろ?」
頭を軽くポンポンされた。
そっか、後つけられてたのか気付かなかった。
でも、来てくれていなかったらあの激痛の時、どうして良いか分からなかったもん。
「ストレス抱えてるんでしょうってお医者さんが」
俺は黙って雅美さんを見つめた。
「どうしたのユノ……話聞いてあげるよ」
優しい声。
雅美さんに……アキラさんが手を出してこない不安とか……そんな事言えるわけがない。
黙っている俺の手を雅美さんはぎゅっと握って「無理強いはしたくない……話したくなったら話して……ユノは1人じゃないよ?じい様もアキラもいるでしょ?」
うん……知ってる。
雅美さんも居てくれる事を知っている。
離れて行かれるのが怖くて言えない。言葉に出来ないんだ。
◆◆◆◆
点滴が終わって、雅美さんに家に連れて帰ってきて貰った。
「今夜はお粥にしようか?食べれる?」
俺は頷く。
ベッドに寝かせられている俺の頭を撫でて「じゃあ、作ってくるから」と離れようとした。
俺は1人にされるのが不安でつい、雅美さんの手を掴んだ。
「ユノ、どーしたの?」
聞かれても返事をしないから、雅美さんはベッドに座り、俺を起こした。
なんで起されたんだろ?と思っていたらぎゅっと抱っこされた。
正確には膝の上で横向きに抱っこ。
そして、背中をポンポンされた。
「大丈夫だよ、側にいるから……眠るまでこうしてあげる」
耳元で聞こえる優しい声。
俺は雅美さんにしがみついた。
「よしよし、いい子」
まるで子供をあやすみたいに背中をポンポンされて、抱っこされる俺。
……ふと、昔を思い出した。
夜中に目覚めて怖くて泣いていると、父親が抱き締めて寝てくれた。
今みたいによしよし、いい子って声を眠るまで声をかけてくれて安心して眠れた思い出。
雅美さんは温かい。
耳を雅美さんの身体にくっつけていると心臓の音が聞こえてきた。
トクトクって……凄く安心する。
「俺……子供みたい」
「ふふ、不安な時はみんな、そうだよ」
「子供だから……アキラさん……」
「えっ?」
俺は言いかけてやめた。
だって、エッチだって思われちゃう。
「……ユノが悩んでたのアキラの事?」
雅美さんの質問には答えられない。恥ずかしいもん。
「そうかな?って思ってたんだ……アキラもね悩んでたから」
「えっ?」
アキラさんが悩んでた?
驚いて顔を上げたら意外と雅美さんと顔が近くてビックリしてしまった。
「ユノに手を出したいけど、出せないって」
「……それって俺が子供だから?」
「違うよ、大事だから……ユノが大事だからだよ」
何それ?……良く分からない。
「ユノ……初めてでしょ?セックスするの」
ま、雅美さんがセックスとかあああ!!!
そういう事を言わない雰囲気しているから俺は驚いた。
しかも、初めてとか……バレてるよね、未経験だってさ。
「ふふ、顔真っ赤可愛い」
雅美さんはそう言って俺の額に軽くキスをした。
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