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3話
キスしたんだなあ。
改めて実感しちゃうよ。
アキラさんの唇の感触を思い出した。
温かい唇。
キスってあんな感じだったんだなあ。
ふいにされたから良く分からなかったけど、
ドキドキとか無かった。
ドキドキするものなのかな?
「ユノ」
「へ?」
名前を呼ばれて顔を上げた。
「着いたぞラーメン屋」
「えっ?」
窓の外を見ると黄色い看板が目に入った。
いつの間に?
キョロキョロする俺の頭をくしゃくしゃ撫でるアキラさんは、
「ほら、降りるぞ」
と笑う。
アキラさんと同時に車から降りてロックをする。
ラーメン屋を見ると入り口に数人列んでて、相変わらず人気だなあって思った。
列んで無い日は店休日くらいだもんなあ。
列の後ろにアキラさんと列ぶ。
「待てるか?」
なんてアキラさんが笑いながら聞いてくる。
「平気、俺、良く列んでるし」
「えっ?何時も来るのか?」
「あー、たまに」
「1人で?」
「はい。」
「そっか、ユノって1人で行動すんの好きなのか?ほら、写真撮りとか」
「1人が好きって云うより、友達居ないだけです」
そう言ってしまって、直ぐに慌てた。
ヤバい、どん引きされると。
アキラさんは俺をじーっと見つめて、
「じゃあ誰かと一緒にラーメン食べんのは俺が初めて?」
と、聞いてくる。
「まあ、そうなりますね」
そうだ、誰かと列に列ぶなんてアキラさんが初めてだ。
「そっかあ」
アキラさんは何故か嬉しそうだよ、何でだ?
「またユノの初めてをゲッツ!」
いきなり某芸人の真似。
あ、そーか、
初めてを一緒にしよう。
アキラさんがそう言ってたもんな。
そっか、これも初めてに入るんだな。
そんな会話をしている内に列が縮まって来た。
店内入り口に立つと、
「あ~アキラじゃん」
と店内から声がした。
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