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7話

「ユノ、一緒撮ろう」 アキラさんは俺の肩を抱き寄せて顔をくっつけてきた。 腕を精一杯伸ばしてシャッターを押す。 それから数枚アキラさんを撮って、海を撮った。 黒い海の波が月明かりで揺らめいている。 「ユノ、カメラかせ」 アキラさんは俺からカメラを奪うと俺を撮りだした。 「はーいユノくん笑って」 なんかグラビア撮るカメラマンみたいで笑った。 「いいねえ、その笑顔。じゃあ、そのままアキラさん好きって言ってみて」 「えっ?」 なんじゃそりゃーと笑う俺。 「ほら、好きですは?」 アキラさんが近寄ってくる。 「あー近い近いアキラさん」 俺はアキラさんからカメラを奪い返す。 「あ~、もう。何で言わんかな?」 「言って欲しいんですか?」 俺は袋から出した紙パックにストローを通す。 「そりゃあ…まあ」 アキラさんはちょこんと俺の隣に座る。 なんか可愛いなあ。 好きって言って欲しいもんなのかあ。 「アキっ…くしゅんっ」 名前を呼ぼうとして、くしゃみ。 あははっ、 笑ってみせた俺の背後からアキラさんがぎゅっと抱きしめてきた。 「何してんスか?」 「くしゃみしたから、海風って結構冷たいな」 アキラさんは俺を腕の中に抱き込む。 「ユノ体温高いな」 「お子ちゃまって言いたいんですか?」 ムッとして振り向くとアキラさんの顔近い。 近すぎて、アキラさんの唇が軽く触れた。 ちゅって、 「ユノ……お前、キスの時は目閉じろよ」 照れたようなアキラさん。 ああっ、そっか、 俺、目開けてた。 「閉じるものなんですか?」 「閉じるもんなんですよ」 「目、閉じたら顔見えないじゃないですか?」 「まあ、そうなんだけどさ、キスはさ感触を楽しむもんで視覚で楽しむものじゃない」 「そういうものなんですか?」 「そういうものなんです」 「じゃあ、目閉じます」 目を閉じると真っ暗。 でも、 「えっ?ユノ、またキスして良いんか?」 とテンパっているアキラさんが分かった。 そっか、目閉じても分かるんだ。

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