24 / 133
3話
裸族アキラさんはパンツ一枚で朝食を作ってくれた。
「アキラさん料理上手いですね」
「ありがとう。でもユノもちゃんと自炊してんだな。具材いっぱいあるし、調味料も」
アキラさんはご飯をついで、俺に渡す。
炊きたてご飯って本当に良い香りするよね。
「自炊するよ。外食高いもん福岡はさ、ランチで千円近かったりするし」
「今度はユノに作って貰おうかな?」
「うん、いいよ」
そう言って仲良く朝ご飯を食べた。
アキラさんは後片付けもしてくれて、正直助かった。
ちょっとズキズキする。
「ユノ、着替えたら病院行こうか」
「へ?」
「手だよ、相当痛いだろ」
「もう平気だよ。ちょっとは痛いけどさ」
俺は笑って平気そうに見せる。
病院とか保険証ないとさ、高い。
「本当に?」
「うん」
「そっか」
アキラさんはニコッと笑って着替えを始めた。
ほっとした。
アキラさん何時に出るのかな?って携帯で時間見てたら、
「ユノ、上着きて」
と上着を渡された。
「え?なんで?」
「ほら、手伝ってやるから」
アキラさんは俺の手を掴む。
しかも痛い方の手を。
ズキンッと痛みが走って、
「いったっ」
って顔が歪む。
「すんげえ痛いんだろ本当は」
アキラさんが聞かれて首を振る。
「痛くないよ」
「はいはい。分かった」
アキラさんは俺の痛くない方を掴み、歩きだす。
「えっ、ちょっと」
引っ張られて歩く俺は、靴を履くのを拒否ったら抱っこされた。
「や、ちょ、アキラさん」
ジタバタ暴れるけど結局は車に乗せられた。
そうなったらもう諦めるしかない。
「ユノ、何で我慢すんの?」
「だって保険証ないから」
「なる程、金か」
こくんと頷く。
「心配すんな、俺が出す」
「だめ、」
「遠慮すんな」
「するよ、高いもん」
必死にそう言う俺にアキラさんは笑うと、
「じゃあ貸しといてやる。」
と頭をぐりぐりされた。
******
病院で診察してもらったら、ヒビ入ってた。
道理で痛いはずだよね。
看護士さんが腕を固定してくれた。
なんだか大袈裟に見えて、嫌だなあ。
診察室を出るとアキラさんが固定されてる手を見て、
「ほんと、我慢し過ぎやぞユノは!」
と心配された。
「ごめんなさい」
謝ったのは心配させた事とお金の問題。
通院しなきゃいけないと言われたから。
ううっ、一回につき掛かる費用に泣きそうだった。
「ユノ、こら、顔上げろ」
俯く俺の顔を無理やり手で上げるアキラさん。
「また悩んでるな?通院するんだろ?行かないとか言うなよ」
うっ、読まれてる……つい、目を逸らす。
「俺に頼れ」
「でも、」
「頼って欲しかとぞ?こっちはさ」
そう言われて黙って頷く。
「お願いします」
「はい。了解」
アキラさんは頭をぐりぐりと撫でると会計しに行った。
アキラさんにたくさん迷惑かけまくりなのを反省。
病院指定の薬局でも薬代出してくれて、アキラさんの財布事情を心配せずにはいられない。
「アキラさん、早めに返していきますから」
車内でそう決意表明する俺。
黙るアキラさん。
あれ?
さっきは頭ぐりぐりしてくれたのに、もしかして本当は迷惑だったとか?
「アキラさん、あの、ごめんなさい」
不安になり謝る俺の頭にガシッと掴むように乗せられた手。
「ユノ、頼られたいって言うたよね?」
はい。確かに……
「金の事も気にすんなっても言うたよな?」
うっ…
「迷惑かけまくりだから」
俺は思った事を言葉にする。
「かけたのは迷惑じゃなかろ?心配。心配は恋人なら当然にするやろが、こんのばかちんが!」
最後の言葉の言い方が福岡出身のベテラン俳優、の真似っぽくて笑ってしまった。
「ごめんなさい」
「あー、だけん謝るなっち!」
「だって」
アキラさんを見つめると、
「あー、ちくしょーばり可愛いか!チュウさせろ」
なんて笑わせてくれる。
商店街近くになり、
「アキラさん駐車場こっちじゃないよ」
左折すると俺んちに行ってしまう。
「家に送るったい。街中じゃチュウ出来んし」
あーね。本気だったのか。
ともだちにシェアしよう!