33 / 133

6話

「アキラもユノもお互いに見る目あるね」 「うん。アキラさんは凄く優しいし、カッコいい!俺はどうか分からないけど」 前から仲良くして貰ってた。その時から良い人だなって感じてたけど、今はもっと…… 色んなアキラさんを見て感動したって云うか、何だろ?前よりも… 何? なんて云うんだっけ? まあ、いっか、あまり深く考えないようにしよう。 「でも、寂しくなるなあ」 雅美さんは俺をじっと見ている。 「何?」 「まだまだ子供だと思ってたユノが成長してさ、親離れされた気分」 「えーっ、何ですかソレ?」 親離れって…雅美さん若いのに。 「いつの間にか大人になるんだねえ」 何だかしみじみしちゃって雅美さんってば可愛い。 「俺って雅美さんにはどんな存在何ですか?」 「うーんと、子供?あ、違うな。弟かな?」 真剣に考える雅美さんにほんの少しだけ、寂しく思ってしまったのはどうしてだろう? 最近、経験した事がない感情に気づき、自分でも不思議だった。 「お兄ちゃんかあ」 この言葉に雅美さんは微笑み、 「あ~、何か新鮮。お兄ちゃんって憧れる」 そんな事を言う。 雅美さんはお兄さんとお姉さんが居るから、自分より下を欲しかったのかな? 「じゃあ、今度からお兄ちゃんって呼ぼうかな?」 「おー、良いなあ。呼んで貰おう」 ニコニコな雅美さんは可愛い。 「じゃあ、お兄ちゃん。今日は家事ないから爺様の所戻って良いですよ」 「いや、今日はユノとドライブしようかと」 「え?」 「行こうか」 雅美さんは俺の上着と何時も出掛ける時に持っていく俺の鞄を持ち玄関へ。 ドライブ? わあ、どうしよう。 何か嬉しい。 俺も雅美さんの後ろをついて行く。 戸締まりも雅美さんがしてくれて、車へと乗り込む。 助手席に座りシートベルトを締めようとすると、雅美さんが身体を俺の方に乗り出して締めてくれた。 フワリと香る匂いはシャンプーかな? って、何、匂い嗅いでるんだ俺? 変態だ! ******* うーそーつーきーっ。 消毒薬やらの匂い漂う待合室で俺は拗ねている。 ドライブって言った! 言ったくせに、病院に居るのは何でだよう! しかも、雅美さんは遠回りまでした。 俺が嫌がるのが分かるから。 「ユノ、怒ってる?」 雅美さんはご機嫌伺うとかじゃなく、何時もの笑顔。 無言な俺。 「アキラがね、お金気にして通院しないかもって心配しててさ」 アキラさん…、 アキラさんってば。 「ユノ、愛されてるねえ」 雅美さんは俺の頭をポンポンと軽く叩く。 愛されてる。 何か初めての響き。 雅美さんを見ると、あの癒やしの笑顔。 ちぇっ、 拗ねてる俺って子供じゃん、って感じた。 名前をスタッフに呼ばれたので診察室に向かう為に立ち上がる。 「お兄ちゃんも一緒に行こうか?」 雅美さん……そんな冗談も言えるんだな。 「お兄ちゃんはここで待ってて」 俺もジョークで返す。 通院とか、しない気だったのバレてたんだな、アキラさんさすが。 病院が怖いとかじゃない。薬代とか医療費が怖いだけ。 なるべく、お金は掛けたくない。 医者にまた、様子診せに来て下さいと言われた。 ちぇっ、そんな診なくてもいいのに。 はい。と小さく返事を返して待合室に向かった。 「川畑」 後ろから声を掛けられて、えっ?俺?って考えた。 世の中に川畑さんは沢山いるし、 何よりも知らない声。 「川畑、久しぶり」 後ろから声を掛けてきた誰かは俺の肩を軽く叩いた。 一応、振り返る。 俺と同じくらいの男がニコニコ笑ってるんだけど、 ぶっちゃけ誰?って感じ。 無反応の俺に相手も、あれ?って顔をして、 「川畑だよな?」 と確認して来た。 「たぶん……」 「えっ?多分って何?」 驚く目の前の男。 「川畑って世の中に沢山居るし、君がいう川畑が俺かどうか自信ないから」 人違いかも知れないし。 目の前の男は笑い出して、 「川畑、お前って面白いんだな。最高!」 と俺の肩をバンバン叩く。

ともだちにシェアしよう!