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第2話 ここにきて
からからから、ぴしゃん。
少し遠くで、引き戸の締まる音がした。
間宮さんは外出しないし、来客なんて担当くらいだ。
もう締め切りの時間になってしまったのだろう。
熱を出した俺は、そのままベッドで眠りこけてしまった。
ペラ。
紙をめくる音がして、顔をそちらに向ける。
ベッドの横、窓際の椅子に座る間宮さんは、手の平サイズの本を読んでいた。
窓から射し込む夕焼けの日に、間宮さんが照らされて眩しかった。
七年前のあの日を、俺はほのかに思い出していた。
「間宮さん」
「ああ、起きたのかい」
声をかけると、間宮さんは本から顔を上げて俺を見る。
「なにか欲しいものは?」
間宮さんは俺の、額にへばりついた前髪をどけながら言った。
間宮さんが欲しい、とか、俺の熱に溶かされた脳はまだそんな事を考えている。
「……喉が、」
「じゃあ、今水を持ってくるよ」
間宮さんは本を椅子に置き、俺のために水を取りに行った。
その背中を見送るのが、たった少しの距離の事なのに寂しい。
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