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2話-10
「さっきの言葉、どこまで本気?」
男の家の前でタクシーを降りる。
俺は財布も持っていないから、当然支払ったのは男だ。
「全部、本気です。家事手伝いでも雑用でもなんでもします。俺が怪我させてしまった、左手の代わりに……」
「ただの事故だから、気にしなくてもいいと、言っても?」
本当だったら慰謝料や割ったガラス代を請求されるような立場にあって、それが無償で許されるなら、ありがたい事はない。
けれど、どこか諦めたような、熱のない男が、時折見せる優しさが俺の中にわだかまる。
優しくされっぱなしで気にしないなんて、そんな心のない人間に、俺はなりたくなかった。
「気にしないなんて……出来ないです」
「……僕1人で決めるわけにもいかないから、明日担当が来た時に話してみるよ。だから、明日もおいで」
男の言葉に俺は大きく頷いて頭を下げる。
「ありがとうございます」
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