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2話-13
「あの、代筆って?」
俺はさっそく、間宮さんにお茶と、松本が持ってきたであろう弁当を机に準備した。
間宮さんは利き手を怪我してしまったので、一応食べやすいようにとスプーンやフォークを用意する。
「今時、執筆方法はパソコンでするのが多いのだけれどね。僕は、手で紙の上に書かないとインスピレーションが湧かないんだ。だから、僕の代わりに手で書いてくれる人を探して貰うんだよ」
間宮さんは、握りなれない仕草でスプーンを握り、弁当に突き立てる。
「……あの、それ、俺じゃ出来ないですか?字は……そんな下手じゃないと思います。漢字も……辞典見ながらとかで平気なら」
そんな仕事、まさに俺がやるべきなんじゃないだろうか。
それこそ、左手の代わりを申し出た、俺の仕事だと思った。
「……僕としては、そうしてほしいんだけどね」
「?……やっぱり、俺みたいなのじゃ、ダメですよね……」
シュンとなる俺に間宮さんは苦笑した。
右手だとやはり上手くいかないのか、ご飯をポロポロこぼしながら。
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