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2話-18
カラカラカラ。
珍しいことに(と言っても、まだ三度目の訪問だけれど)引き戸が中の人間によって開けられる。
間宮さんだった。
これまでは中から声をかけられ、勝手に上がっていたのだけれど。
開いた戸の先にいる間宮さんが、真っ直ぐに俺を見てきた。
俺は何となく、目を逸らしてしまう。
あの本の内容がフラッシュバックした。
まだ午前10時なのに、頭の中が真っピンク。
たらたらと垂れ落ちる汗は、暑さのせいだけではないのは明らかだ。
「叶くんは、馬鹿だね」
「お……俺はバカです」
何を言っているんだ、俺は。
けれど否定する事も出来ず、間宮さんの言葉を繰り返してしまう。
「おいで。朝食は済ませたかい?」
「あ、いえ……」
カラカラカラ、カシャン。
間宮さんの後を着いて行きながら答える。
寝不足で、朝はとても食欲が湧かなかった。
けど、今は少し腹が減ってるのが気になっていた。
「じゃあ食べよう。2人分あるから」
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