49 / 89
4話-2
「その人は……?」
「うん、間宮さんの代筆をしてくれる方だよ。村木(ムラキ)さん」
村木さんが会釈したので、俺も会釈し返す。
薄い顎髭と、表情を隠した長い前髪。
たいして愛想が良い訳でも、不躾でもなく、ただ少し無関心な感じがした。
どことなく、間宮さんに似ている。
そんな気がした。
「これ、お菓子貰ったんで食べてください」
「あ、ありがとうございます。間宮さんは奥にいますので、今お茶を持って行きますね」
「ありがとう」
菓子折りを渡され、二人は間宮さんのいる部屋へ向かった。
パタンと閉じる扉。
俺はこの家で、たった一人部外者だった。
台所へ行き、お湯を沸かす。
その間に菓子折りを開けると、中にはどら焼きが入っていた。
ポピュラーな普通のどら焼き、抹茶味と思われる色のものや、カスタードが入ったものもあるらしい。
その三種類を2つずつ盛り皿に乗せ、急須に入れたお茶を湯のみに三つ注ぐ。
食器は昔からあるもので、お茶っぱは貰い物だという。
この家で間宮さんが買ったものは、全て書斎の中に収まってしまうそうだ。
ともだちにシェアしよう!