51 / 89
4話-4
「君は高校生?」
村木さんがおもむろに言った。
シャワーのノイズで、一瞬反応が遅くなる。
村木さんはシャワーを止めて、俺を見据えた。
「高校生?今、夏休み?」
「あ、高校生で今夏休みです」
村木さんは、ふうん、とか言いながら何か考えてるのか、顎を指で触った。
不意に村木さんの手が俺のワイシャツに伸びる。
びしょ濡れになったシャツのボタンを、一つ一つ丁寧に外して行く。
「学校が始まったら、ちゃんと学校通うんだろ」
「え、あ、そうですね」
夏休みが終わった時のことなど考えてなかったが、当然朝から間宮さんのところに来られるわけでもない。
間宮さんに会える時間も、ぐっと減ってしまう。
「学年は」
「は、」
「三年生?」
「あ、はい」
最後のボタンが外され、開いた隙間から指が胸を這う。
そっと触れられただけなのに、俺の心臓はドキドキとした。
当然のように触れてくる村木さんの様子を、俺はただ見守るしか出来ない。
「火傷のあとは、平気らしいね」
村木さんの手が離れ、火傷はないはずなのに、俺の肌は触れられたところがじりじり痛む。
「高3なら、これから受験なり就職なりあるんだろ」
「……はい」
ともだちにシェアしよう!