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4話-8
結局その日は間宮さんが戻ることはなかった。
電話で松本さんから連絡があり、帰るのに時間がかかるから俺も村木さんも帰っていいとの事だった。
『鍵は開けっ放しでいいから、家の電気も付けたままにしておいて』
言われた通りにして、借りていた服も畳んでわかる場所に置き、村木さんと2人で家を出る。
「……あの、間宮さんの身の回りのことを手伝うのは、いいですか」
夜は明るく、五時を過ぎたというのにまだ青空が広がっていた。
村木さんは身長が高いから、俺を見下ろすように見た。
第一印象から苦手な人で、それに拍車がかかる。
「それも俺がやるからいいよ」
そう言われては、返す言葉もない。
まるで扉に鍵をかけて閉め出された気分だ。
いや、そもそも部外者だったのだから、いるべき場所、戻るべきところに戻るだけなのかもしれない。
そう、元に戻るだけ。
胸につかえる感じがして、手で触ってみてもそれが消えることはなかった。
とにかく、明日間宮さんに会って、謝って、それで。
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