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4話-9
はあ、と盛大にため息をつく。
間宮さんの家に入るのを躊躇うのは久しぶりのことだった。
こんなに気が重いことはない。
原因の一つは村木さんだった。
昨日のこともあり、苦手意識が強まって、また顔を合わすのかと思うと夜も眠れなかった。
そして、間宮さんの事。
純粋に間宮さんの手伝いをしたかったのか、それとも、俺は馬鹿だからエロいことに惹かれてるだけなのか。
正直なところ、自分でもわからなかった。
間宮さんはどうしてあの時、俺に触れたのだろう。
どうしてもう、触れてはくれないのだろう。
考えないでいたことまで頭の中をぐるぐる回って離れない。
チャイムの上に指を当ててはいるのに、それを押すことが出来ない。
たった数ミリ動かすだけなのに。
カラカラカラ。
あ、っと思ったときにはチャイムを押してしまっていた。
ピンポーン。
「……あ、あの、おはようございます」
開かれた引き戸の中から虚しくチャイムが鳴る。
中から現れたのは間宮さんで、腕にはいつものように包帯を巻いていた。
「昨日は心配かけてしまったね」
「いえ、俺の方こそ、すみませんでした」
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