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4話-13
村木さんと間宮さんは書斎に入ってしまったので、俺はすでに整頓された部屋を掃除する事にした。
物は少なくないが、普段使わない物は使われず棚のものは棚にきれいに片付けられていた。
ここ最近は掃除ばかりしていたから、今日もほこりひとつ見当たらない。
自分の部屋ですら掃除なんてしなかったのに、掃除人としての腕前が上がったかもしれない。
そんな折、窓の外から声が聞こえた。
同級生たちか、それとも近所の子供達か、夏休みを満喫しているようだった。
公園に面した窓があるのは書斎だけだから、他の部屋では声しか聞こえない。
やる事もないから部屋の隅に座って、目をつぶった。
あの日野球をしていなければ、俺がボールを取りに行かなければ、俺がここにいることもない。
きっと宿題もやらず、怠惰に過ごす夏休みを送っていたはずだ。
そういえばお茶の一つも出していないことを思い出し、台所へ向かう。
そこには村木さんがいた。
「お茶はいいよ。また溢したら困るだろ」
村木さんの声はどうしてこうも、冷たく感じるのだろう。
俺が苦手だと感じてしまったからだろうか。
それともやはり、村木さんに嫌われているからだろうか。
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