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4話-14

「村木さん……俺、やっぱり、辞めたくないです」  こぽこぽと急須に湯を注ぐ音がどこか呑気だ。 「そうは言ってもね、こっちは仕事だし」 「遊びとは、思ってないです」  盆に湯呑みを乗せてから、村木さんは腕を組んでシンクに腰を預け、俺を見た。  なにかを試されているようだった。  村木さんは審査員で、俺のことをチェックしている。  けれどきっと最初から評価はマイナスで、そこから持ち上がるのは難しい。 「君がそう思っていてもね。君の居場所は、ここにはないよ」  どくん、と心臓が不安で速く動き出す。 「それともやっぱり、」  村木さんは口端を上げて、厭らしく笑う。  人の弱みに付け込む人間は、どいつもこいつもそんな顔をしている。 「間宮先生の性奴隷にでもなりたいのか」  そう遠くない距離にいた村木さんが距離を詰め、俺の身体に触れる。 「昨日約束したばかりなのに、君はやっぱり、そういう人間なんだな」 「ち、が……」  村木さんの手がシャツの下を這い、指が乳首を潰した。 「村木くん」

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