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5話-2

「もう体調はよさそうだね。なにか欲しいものは」  優しい問いかけに俺は思案する。  少し喉が渇いていたが、けれど今一番欲しいものは別にあった。 「間宮さんが欲しい」  喉が渇いて水を欲するように、身体が、全身が間宮さんを求めていた。 「僕はここにいるけど」  微笑む間宮さんが、言葉の真意を理解できないわけもない。  わからないふりをしてかわそうとするのを、俺はもう一歩踏み込んだ。 「違う……間宮さん、わかるでしょう」  もう片方の手で間宮さんの胸からゆっくりと下に撫で下ろす。  柔らかく萎えた、それが欲しい。  間宮さんは目を瞑ってから、はっきりと言う。 「今はそういう気分じゃない」  八割がた予想していた答えとは言え、心がぐらりと揺らぐ。  間宮さんとの戯れは数知れず、それでも身体を繋げたのは片手の指に収まるほど。  そういうものだと諦めもついていた、それでも時折間宮さんが欲しくてたまらなくなる。  今がその時だった。

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