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6話-3
間宮さんは元々他出版の一般誌に小説を投稿していた。
そこに才能を見出したのが冴木さんだったと言う。
担当は最初から松本だけれど、間宮さんを見つけたのは冴木さんだ。
わざわざあの手この手で間宮さんに連絡を取り引き抜いた、そこまでの情熱たるや尊敬する。
俺は湯を沸かしつつ服を着て、湯が沸いたら茶を入れて二人の元へ。
「それじゃあ私はこれで」
俺が部屋に入ると、入れ替わるように冴木さんが椅子から立ち上がった。
「ああ、お茶を淹れてくれたのか」
冴木さんは俺の持つ盆から湯呑みを取って一口啜る。
ご馳走様、と言って俺の頭を撫でて、出て行ってしまった。
冴木さんと顔を合わすのは年に一回か二回くらいだが、そのたびに頭を撫でられる。
おそらくは、未だ初めて会った当時の、高校生くらいにでも思っているのだろう。
それにしたって子ども扱いが過ぎるが。
俺はそれを横目で見送りながら、もう一方の湯呑みを間宮さんの方へ出した。
「なんだったんですか?」
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