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6話-4
冴木さん自らが間宮さんに会いにくるのは珍しい事だった。
間宮さんが腕を怪我した時でさえ、後から電話を寄越したくらいで直接見舞いにも来なかった程だ。
それをわざわざ会いにくるなんて。
「気になる?」
「なりますよ」
含んだ笑みを浮かべる間宮さん。
なんやかんや都合をつけて、いつも間宮さんの側にいた。
だから松本との打ち合わせの内容だって(俺がスケジュール管理してるのもあって)把握しているというのに。
俺の知らないところで知らない話が進んでいるのが、少し嫌だった。
気持ちを落ち着けるために、冴木さんが飲み残したお茶をグイッと呷る。
渋みと甘みのハーモニーが喉を潤した。
「大した事じゃない。次の仕事の話さ」
「次の、ですか」
「ああ。今書いているシリーズもひと段落ついたからね。新しい話を書いてみてはと言われたんだよ」
間宮さんが今手がけているシリーズ、「睡蓮の微睡み」は白昼夢のような濃厚な濡れ場と、甘い読後感が人気のシリーズだった。
俺は相変わらず活字が苦手だったが、間宮さんの作品だけは必ず読んでいる。
睡蓮の微睡みシリーズは、読み終わった後にじっとりと汗をかくような熱を、ため息の出そうな倦怠感を覚えるほど濃厚で甘い物語りだった。
この間上げた分でシリーズとしてはひと段落することを聞いて、少し寂しくなる程度には俺に取ってお気に入りの作品でもある。
「新しいのは、どういう方向でいくんですか?」
俺が聞くと、間宮さんは俺をまっすぐ見据えていた。
射抜くような視線にドキッとする。
なにかおかしなことを言っただろうか。
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