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6話-15

 いちいち芝居がかって、間宮さんは俺をからかっているようだ。  男は俺だけしか知らないという間宮さんは、猫にするように俺の顎の下を撫でた。  そういう仕草はどこで覚えたんだろう。  胸の奥がチリッと焦げ付く。  こんなにも愛でてくれているのに、目の前に見え隠れする間宮さんの過去が気になって仕方なかった。  男は俺が初めてでも、女はどうだ。  その唇も、セックスも、恋心だって、間宮さんの初めては全部俺の知らない女に攫われてしまったんだ。  いるのかいないのかもわからないその人に、俺は嫉妬している。 「……間宮さんの初めて、もっと欲しかった」  間宮さんの手を掴んで、想いを口にする。  伝わったのか、間宮さんは小さく笑った。 「最後は全部、君のものだから」  そう言って間宮さんが顔を近付けたから、俺は目をつぶり受け入れた。  間宮さんの最後の人。  それは確かに、結構魅力的かもしれない。

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