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【紅葉19才の誕生日 1】

紅葉19才の誕生日 ファンクラブイベント ロックバンドのファンクラブイベントにしては「アウトドアでメンバーとカレー作り!」は異例の内容だ。 各メンバーに対してファンの定員はそれぞれ15人の少人数制で、抽選で選ばれたファンは至近距離でのメンバーとの触れ合いに歓喜した。 つけ爪と派手な装飾のついたネイル厳禁、エプロン持参、料理に相応しい髪型の約束で集合したファンの子たちは荷物をロッカーに預けると屋外の調理スペース(BBQも出来る)へ移動した。 因みにメンバーごとに作るカレーの種類はこんな感じ。 紅葉、フツーのお家カレー(甘口) 凪、スパイスで作る本格派カレー 光輝、簡単!美味しいキーマカレー 誠一、化学的料理、鮮やかカラーのタイカレー みな、糖質オフ野菜カレー 「各チームに分かれて集合ー! メンバーカラーのバンダナもらってつけてね。」 "Links"のロゴが入ったバンダナのプレゼントにみんなは喜んで頭に巻いた。 「材料は各チームのスペースにあります。 肉は冷蔵庫にあるから使うタイミングになったらスタッフに言って下さい。 あと足りない物とか困ったことがあったらスタッフに聞いてね。料理の分からないことは凪があとで見回ってくれるから聞いてね! ではみんな怪我に気をつけて、必ず手洗いしてから始めるように!」 光輝のアナウンスで各チーム動き始める。 会話の邪魔にならない程度にLinksの曲も流されて、時々メンバーはマイクで進捗状況をレポートしながら作業を進める。 普段料理をしない若い女の子も多く、多少不安もあるが、和気あいあいとイベントは始まった。 「紅葉、米炊き忘れんなよ?」 凪の一言に慌てて作業を確認する紅葉。 紅葉のチームはファンの子がしっかりしていて、ちゃんと役割り分担してくれているようだ。 一方凪のチームは本格派を掲げたのに初心者が多く、ビシビシと指示を出す凪。 「じゃがいもの皮向き出来る子ー? …一人?(笑) よし、俺と半分ずつ担当ね。 ゆっくりでいーよ。 他にやりたい子いたら手伝ってね。 そこ3人は友達?人参切ってくれる? 皮ごとでいーよ。えー?大丈夫、食えるって! ここ4人で玉ねぎ担当ね。 2人が皮向いて、出来たのからもう2人で切ってくれる? あとスパイス計量してくれる子ー?」 テキパキと進んでいるようだ。 「光輝くん、普段料理するんですかー? ご飯作ってもらえないの?」 「え? 大丈夫!作ってもらってるよ。 でも共働きだから俺も出来ないとダメだなと思って、最近習ってるんだよ。」 「えーっ?!料理教室通ってるのっ?!」 「どこまでも真面目…っ!」 みなはバンダナを巻き付けるように髪を結い、エプロン代わりに黒いジレを身に付けている。 「カレーって簡単だけどカロリー高いよね…。この前残ったカレーをドリアにアレンジしたんだけど、アプリでカロリー計算したら食べる気なくした…。あ、もったいないから旦那に食べさせたけどね、2人分。」 「さすが姐さん! 今日は糖質オフだから大丈夫ですね!」 「ここはお米じゃなくてマンナンライスとか代替えにした方が良かったかな?」 「えー、そこは…お米かな(笑)」 「だよね。やり過ぎると美味しさ半減するもんね!」 「飾り人参とか作っていいですか? 映える盛り付けにしたーいっ!」 女子トークで盛り上がりながら楽しんでいるようだ。 誠一は「これとこれを混ぜると青いルーになるらしいよ?」 集まったファンの子たちに資料を見せる誠一。 「分かりました。」 「タイカレー…実は2回しか食べたことなくて…なんで作ろうと思ったんだろう…(苦笑) 料理出来ないのに…。」 「私のお母さんタイ人! 私、タイカレー作れますっ!」 「ありがとうっ! 君僕の代わりにリーダーになってもらっていい?」 片言のファンの子に握手をし、みんな彼女の指示に従った。 「どう? ちゃんと出来てる?」 しばらくして凪が紅葉のチームに顔を出した。 「あっ!凪くん…! ちょっと…来て、先生…!」 「何?(笑)」 ファンの子たちはツーショットにキャーと言いながら場所をあけてくれる。 みんな首もとの揃いのネックレスに気付いているようだが、暖かく見守ってくれている。 「今煮込んでるけど、サラサラでとろみがつかなくて…。」 「水とルーの分量合ってる?」 「うん。ちゃんと計ったよ?」 凪は一見して問題点を指摘した。 「……火が弱すぎ。 このくらいにして。グツグツしてきたらさっきぐらい弱めていいから。あんま混ぜすぎんなよ? はい、頑張って。 …じゃあみんな、よろしくね。」 そう言って次へ移動する凪。 「はぁーっ! …カッコイイっ!」 凪の背中を目が追っている紅葉を見て、近くにいたファンの子がお玉を受け取り、火の番をしてくれたとか…。 「お前ここにいたの? 分かった、あとで米だけやるから…。」 スペシャルゲスト枠の平九郎を見つけてそう告げる凪。 その横に椅子を出して寛ぐ誠一の姿。 「え? 終わったの?」 「あ、なんかここに座ってご飯炊けるの見張っておけって。」 どうやら戦力外通告をされたらしい。 ギャルソンエプロンも投げ出し、小説をファンの子に借りて読んでいる。 「炊けてるから運ぶの手伝ってよ。」 「もちろん。 お腹すいたね。僕、ほぼ何もしてないけど、みんなが作ったカレー楽しみだな。」

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