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【誠一の代わりにラジオ出演 2】

『え、じゃあどうやって仲直りする?どんな仲直りしたい?』 「お仕置き。…って言わせたいんでしょ?(笑)」 「えーっ?! 僕はね…"ごめんね、大好き"って言ってもらってチューをするのを100回してもらいたいな。 言う方なら200回くらいしたいっ! そしたら何でも許しちゃう。」 『…ごめん、想像だけで甘過ぎて胸焼け気味…(苦笑)』 無事に?収録が終わり帰り支度をする2人… 「ありがとうございました!」 「あんな感じでも大丈夫ですか?」 『大丈夫ー!いつもよりハートフルで良かった!ネタにしてごめんね。』 「全然…。大したネタじゃなくて…(苦笑)」 『いーえー! 紅葉くん良かったらまた来てね!』 「ありがとうございました。 楽しかったです! …いっぱい笑っていっぱい喋ったらお腹空いちゃった…(笑)」 「ラーメン食いに行く?」 「いーのっ?!やったー!」 2人は久々に夜食を食べて帰宅した。 「もうダメ…眠い…。」 「明日何時?…紅葉? …寝てる(苦笑)」 翌日、誠一のマンションにお見舞いにやってきた紅葉… ピンポーン 「本当にお見舞い来てくれたの? え、ここに来ること凪は知ってる?」 「うん。 ちゃんと言ってあるよ。 具合どう? 病院行った? ポカリとかゼリー買ってきたよ!」 「ありがとう。 午前中行ったよ。 インフルエンザじゃなかったけどウイルスの風邪で…熱が下がらなくてさ。 うつると大変だから…マスクしてるけど、ちょっと距離置くね。 昨日も急に仕事…学校あるのに夜遅く働かせてごめんね。」 「誠一くんもいつもあのお仕事終わって学校行ってたでしょ?すごいね。 僕、友達に教えてもらったエナジードリンク飲んだら大丈夫だったよ! 食欲はある?おかゆかうどん作ろうか?」 「ありがとう。 でもうち鍋がないんだー。」 「なんと…っ!」 あははと笑う誠一のマンションは広々としていて室内も夜景も綺麗だが、生活感がまるでない。 病人だというのにコンビニご飯とゼリー飲料、タバコしか口にしていないという…! 誠一は両親がいることはいるが、存在するだけで家族というものではないらしいというのは紅葉も聞いたことがあった。 子ども(誠一は成人して独立してるが)が病気でも何も心配しないのかな?と紅葉は不思議に思ったが、聞けなかった。 「お皿とかタッパーってある?」 「…さぁ? どうかな?」 「……。 んと、キッチン勝手に触ってもいい? とりあえずポカリ飲んで、カットフルーツも買ってきたから食べてて! あ、着替える?身体拭くなら手伝うよ?」 「さっき変えたし大丈夫だよ。 そんなことさせたら凪に怒られそうだし(笑)」 誠一はそう笑って、高級感のあるソファーに凭れて座り、紅葉が用意したカットフルーツを摘まむ。 紅葉はその様子を確認すると、使用感が全くないキッチンへ向かい、戸棚を開けてなんとか器になりそうな小鉢とタッパーを1つずつ見つけた。 タッパーに水を入れてレンジで温めてお湯にし、うどんを半分入れて更に加熱する。 ふやかしてる間に小鉢にめんつゆ(家にないと困ると思って買ってきた)を入れて温めて、割箸でうどんを盛り付けた。 冷凍の小ネギ(あると便利なので一応買ってきた)を乗せて誠一に持って行く。 「食べれそう…?」 「わぁー!美味しそうだね。 すごい、この家で誰かの手料理を食べれる日が来るなんて…!(苦笑)」 「手料理って言う程のものじゃないけど…! …ここには家族とか彼女とかは来ないの?」 「来ないよ。 家族…?お互いどこに住んでるのかすら知らないし、何年も会ってないからね。血繋がってても…他人だよ。 あ、僕愛人の子だって言ったっけ? 父親にあたるひとに二十歳までお金は出してもらってたけど、一緒に食事したこともないんだ。 母親は夜のお店の人で…まぁこれ以上は割愛するね。 僕、愛情とかよく分からないからさ、友達とか遊ぶ子はいても看病してくれるような彼女もいないんだー。」 家族の形は様々だが、紅葉は誠一の話を聞いて切なくなった。 自分の両親は早くに亡くなってしまったが、祖父母と珊瑚がいたし、血は繋がってないけど弟も妹もいる。 誰かが体調を崩せばお世話をしたりされたり、心配するが当たり前だった。 「そっか…。 病気の時、心細いね…。 寝るまで一緒にいようか?いつも僕が風邪ひくと凪くんトントンしてくれるよ! 僕、明日も来るね!あ、お鍋持ってくる!」 「いーよ、悪いし。 凪にも…怒られちゃうよ? 紅葉くんが来てくれて嬉しかった。 本当にありがとう。」 「じゃあ凪くんと来るね! 待っててね。」 誠一の様子を凪に話すと眉間に皺を寄せて唸っていた。 そして料理をたくさん作り、小分けにして保存用にしていく。 ホームセンターで鍋や包丁、まな板を買い、きっちり領収書を切ると学校帰りの紅葉と合流して誠一のタワマンに乗り込んだ。 「あれ? ホントに2人で来たの?」 昨日より少し顔色の良くなった誠一は換気扇の下でタバコを吸っていた。 「このバカっ!! 日頃から不摂生してるから倒れるんだろっ! 完治するまでタバコ禁止! はぁーっ?酒も飲んでんのっ?! 仕事してんの?!バカだろ! ちゃんとメシを食えっ!そして寝ろっ!」 「凪くんがご飯作ってくれたよ。 すぐ食べれそうなやつは冷蔵庫に入れておくね。あとこっちは冷凍庫に入れるから解凍してから温めて食べてね!」 「えー!本当に? こんなに?? こっちは?」 「最低限の調理器具一式。食器も。 俺たちドイツ行くのに貯金しなきゃだからあとでお金払ってね! 少しは頼るか、自炊するか、料理してくれる彼女作れよ。」 「わぁー! ありがとう。お節介…!(苦笑) だけど嬉しい。」 たまにはこんなお節介もあったっていい。 誠一の笑顔に凪と紅葉は安心して帰宅したのだった。

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