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【久しぶりのデート 2】

日陰はちょっと寒いからと言って、凪のジャケットのポケット内でこっそり手を繋いで、浅草の街を歩く。 思えば日本観光らしいことはしてないので、今更だが、紅葉を連れてきたのだ。 ラーメンを食べたばかりだと言うのに紅葉は煎餅や団子を食べ歩きをしながら、テレビでよく見る光景を実際に見て回る2人。 食品サンプル作りの体験をしてみれば、何故か歪な形に仕上がる紅葉の作品… 一方凪はそつなくこなす。 「凪くんは本物でもサンプルでも美味しそうに作れるんだね~!」 「お前は指先器用なはずなのになんでかな?(苦笑)」 「分からない(笑) でも面白かった! みんなにお土産買うー!」 ドイツの家族に小さな食品サンプルグッズを買う紅葉。凪も選ぶのを手伝う。 「パフェどう? 女子向けじゃね?」 「っ!! 美味しそう…っ!」 見たら食べたくなるのが紅葉。 「……食べたいの?」 「うん…でも今度でいいよ。」 流石に食べ過ぎだと笑って、2人は店を出ると仕事へ向かった。 明日のイベントLIVEの打ち合わせを済ませて一度自宅へ。 「平ちゃんがずっとくんくんしてくるー!」 「あー、いろんな動物の匂いがするからじゃね?」 「そっかー! え、臭いかな…?」 「人間レベルは大丈夫(笑) でも食事行くし、パーカーじゃなくてジャケットに着替えてくれる? 俺散歩行ってくるよ。」 「僕も行くよ?」 「紅葉くんは体力残しておいて欲しいから…ちょっと休憩してて?」 「っ!! …もうっ!」 夜の含みを持たせてそう言われて赤面しながら凪の肩を叩く紅葉。 とりあえず留守番をしながら平九郎のご飯を準備して、フォーマルまではいかないが、少しキチンとした服に着替える紅葉。 昼間は暖かかったのだが、夜は冷えるので2人ともコートを羽織った。 今日は珍しく電車とタクシー移動だ。 たまには凪も外で飲みたいと言う。 もちろん紅葉は了承して、暗くなった冬の街並みを楽しみながら移動した。 「美味しい?」 「うんっ。すごく…! あの…っ! こんないいお店だと思ってなくて…! ごめんね、お昼ラーメン屋さんで…!」 凪に連れてきてもらったのは、ホテル内のカジュアルフレンチで、個室風の店内に通されて紅葉はとても驚いたのだ。 「なんで? あの店旨かったよ? また行こうよ。」 凪は気にする素振りもなく、そう言うと笑顔を見せた。 デザートも頼んでくれていて、濃厚なチーズケーキとフルーツのプレートを見て目を輝かせる紅葉。 「俺のも食べていーよ?」 「そんなに甘くないから凪くんも食べてみて。残ったらもらうね。」 そんな何気ない会話をしながら、凪は話を切り出した。 「紅葉、春休みの予定まだ入れてないよな?」 「うん。三月の後半はツアーだよね? その前に…また合宿?」 「いや、今年はなしだって…。 まぁ、楽曲制作はやらなきゃだけどな。 光輝と話して、昨日やっと2週間の休みのOKもらったから。」 「えっ?!2週間? それって僕もいいの?」 「当たり前だろ。 ドイツ……俺も連れてってくれる?」 「っ!! 本当に?!」 「本当に。」 凪が微笑んでそう告げると信じられない!と驚きを隠せない紅葉…。 「嬉しい…。 来年の夏休みとかもっと先だと思ってた…。」 「あ、実家の都合大丈夫?」 「…みんな喜ぶよ!!」 「2つ、確認ってかお願い?があるんだけど… 珊瑚が桜の撮影でこっち(日本)来るのと俺たちがドイツに行くので入れ違いになるかもだけどいい?」 「うん。珊瑚、長めにいられるかな? また翔くんのツアーを一緒に回るって言ってたし。 そしたら日本で会えるから大丈夫!」 「もう一個… これはスゲー大事。 紅葉のおじいちゃんおばあちゃんにさ、このまま日本に住むって話して欲しいんだ。 来年でもまだ期限には間に合うけどさ…、バンド忙しくなって行けるか分からないし…。 やっぱ直接話さないとだよな。 もちろん、俺も一緒にお願いするつもりだけど… あー、ドイツ語…もうちょいペースあげて勉強しねーと…。」 「えっと…?」 「……日本国籍を選んで俺と一緒にいてくれる?」 プロポーズのような凪からの申し出に紅葉は固まって、震える手でデザートフォークを置いた。 それから涙を浮かべながら何度も頷いたのだった。 「良かった。 柄にもなくちょっと緊張した(苦笑)」 「ふふ。 ビックリした。 すごく嬉しいし、楽しみ。」 「ちゃんと春休みもらえるように勉強頑張ってね?」 「うん!」 「で、この後だけど…」 「うん?」 「…部屋取ってるって言ったらどーする?」 「えぇっ?! ほ、本当にっ?えっ、ここ?」 絶対に高いホテルなので動揺する紅葉。 「あ、ごめん、冗談。 取ってない…(苦笑) 空いてるなら泊まってもいーけど… 明日イベントあるし、平九郎も…」 「お家で待ってる…っ!」 「帰ろ。俺たちの家に…。」 「うん。」 帰りのタクシーの中でもコートの下でしっかり手を繋いで帰宅した。 「まだ先だけど…ドイツに行ってる間、平ちゃんどうしよ…?」 紅葉は平九郎の頭を撫でながら不安そうに聞いた。 さすがに一緒に行くとなると検疫やらで時間もかかるし、何よりフライト時間が長いので平九郎を連れて行くとなるとかなりのストレスになるのが心配だ。 「珊瑚が来るなら任せるか、みなたちに頼んでみようか。さすがにずっとペットホテルは可哀想だし…。」 「うん。」 アビーに実家の都合を訊ねるメールを送ってからお風呂に入り、身体を温めた。

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