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【バレンタインと独占欲 1】

※「恋愛以上恋人未満」の翔も出てきます。 1月下旬… 都内 ドラム楽器専門店 「翔くんごめんね!忙しいのに付き合わせて…!」 「いーよ。家にいても肝心の曲が出来ないから煮詰まるだけだし…! 最近は凪にしょっちゅう愚痴聞いてもらったり、飲み相手になってもらってるし… ごめんね、ずっと借りてて。」 「気にしないで。 …僕が帰国出来たら良かったんだけど…! ごめんね。」 「いいの、いいの! コンクールあったんだし! それに珊瑚は紅葉くんが帰ってきたとしても、来日キャンセルしてさっちゃんの付き添いしたと思うし…。 俺も心配で飛んで行きたかったけど、仕事詰まっててさー。 あ、さっちゃん退院出来て本当に良かったね!」 「ありがと。 みんなもホッとしたみたい。 クリスマスプレゼントもみんな開けないで待ってて、さっちゃん帰ってきてから一緒に見たんだって!」 「そっか~!微笑ましい…っ! あ、で?今日は何買うんだっけ?凪に?」 「うん。ドラムのパーツ? 凪くんが言ってたのこれだと思うんだけど…一体どれ?」 「貸して。あー…分かった。 これとこれかな? 凪のセットならこのオプションつけてもいーかもね?」 「さすが~っ! これも買うーっ! へへ…っ」 「プレゼントするの?」 「うん。 学食の券もらったからお昼代が浮いて…その分のお金溜まったから! もうすぐバレンタインだし、凪くん…多分ドイツ行くためにお仕事の調整したり、増やしたりしてるみたいで…。 僕も働くって言ったんだけど…学校もあるし、働ける時間の制限もあるからダメって…。 すごい負担かけてるのに英語もドイツ語も勉強してくれてて…だから何かしたかったの。」 「スゲーいい話過ぎて兄さん泣きそう…っ!」 「見てくれてありがとうっ!買ってくるね!」 紅葉がレジを済ませている間、翔も自分用にいろいろ見て回る… 「遅いね…。」 つい夢中になって機材を見ていると、紅葉がなかなか戻って来なくて様子を見に行く翔…。 店の脇の通路にて… 「ちょっと一緒に話そうよって言ってるだけじゃん?」 「でも人待たせてて…! 知らない人とお話するの…ちょっと怖いし…。」 「あれ?俺のこと知らない? 俺は君のこと知ってるよー! Linksの紅葉くん? 今日はあの怖いカレシ一緒じゃないの? お兄さんとイイコトして遊ぼーよ。 ゲイなら経験値付けたほうがハクがつくんだよ?」 「…いらないっ。」 「……うわ…っ! 最低なアホがいる。」 「翔くんっ!」 「おいで。」 翔は紅葉の手を引いて背中に隠した。 紅葉は凪へのプレゼントを手に震えているようだ。 「げっ! LiT Jの…っ!」 「"げっ!"って何ー?(苦笑) 先輩に失礼だなぁ。 下衆なナンパとか止めた方がいいよ? 只でさえ顔も腕も悪いのに評判まで悪くなるよ?」 「うるせーよっ! あんたバイだろっ?! こっち側に口出しすんなよっ。」 「セクシャリティ関係なくない? モラルの問題じゃん。 この子はダメ。 俺の後輩の大事な子だし、俺の恋人の弟だもん。」 「あんた…っ! えっ?!まさか後輩と恋人共有して兄弟食ってんの?」 「うーん…。 俺も頭悪いけど、君は…どんな頭してんの…?(苦笑) そんなことするわけないでしょ。 偶然にして運命なだけだし…っ! まぁ、君に関係ないか…。 とにかくダメだから。 次絡んだら俺も紅葉くんの恋人も容赦しないよ? 俺は優しいけど、欲求不満で機嫌悪いし…(苦笑)凪怒らせたらフツーにヤバイよ?(苦笑)」 そう言って紅葉を店から連れ出した。 「ごめんね、気付くの遅くなって…。 大丈夫?何もされてない?凪のとこ行く?」 「ん…。平気。 怖かったけど…もう、大丈夫…。 ありがと、助けてくれて。」 「いーえ。1人にしてごめんねっ!」 「あの、このこと凪くんには…」 「報告するに決まってるでしょ。 凪はあいつと面識あるし…。 言わなきゃ俺が殴られるよ(苦笑)」 「うぅ…。」 「大丈夫。プレゼントのことは伏せとくから…!あー、そっか、バレンタインか…! 珊瑚って、チョコくれると思うー?」 「分かんない…。けど、珊瑚はけっこうチョコが好きだよ?」 「えっ?!本当にっ?!」 あまりお菓子を摘まんでいるイメージがなかったので気付かなかったが、みんなで食べれる数があれば珊瑚も口にするという。 「うん。」 「ちょっ! それなら買いに行こっ! 今度は俺の買い物に付き合って!」 「わっ!いーけど…」 "バレンタイン前のチョコ売場は女の子の戦場だよ"と紅葉が教える前に、有名百貨店のバレンタイン特設コーナーへやってきてしまった。 「ヤベー…ここを攻略するのレベル高過ぎ…っ!」 「美味しそうーっ! わーっ!試食あるーっ!行こっ!」 翔の服を引っ張ってぐいぐいと進んでいく紅葉… この人混みでよく試食の文字を見付けられたものだ…。 翔は痴漢に間違われないようにと両手を上げたままの奇妙な体制で後を追う。 紅葉は去年同様、メンバーにプチプラのチョコを買って、凪へのチョコは迷った挙げ句手作りキットを購入した。 「え、待って。いっぱいあって分かんない。 珊瑚はどーいうチョコが好き?」 「…茶色?」 「…だいたいみんな茶色いよ?(笑) えー、中に何か入ってるとか、カカオ多めとか?とりあえず高いやつ?」 「翔くんが選んだやつならなんでも喜ぶと思うよ。」 紅葉の一言に更に悩んだ翔は時間をかけて珊瑚へのチョコを選んだ。 「買えた…。」 「良かったね!」 「お礼に紅葉くんにも何か買ってあげる!」 「僕も今日のお礼にって思ったんだけど…珊瑚がヤキモチしちゃうと大変だからやめとこ? お出かけしただけでも妬いちゃうかも…。 僕だって…もし珊瑚が凪くんにプレゼントあげたらモヤモヤしちゃうよ。」 「そーだねっ! 珊瑚ってヤキモチ妬きの可愛いとこあるからねっ!ツンデレの鏡だよねっ! あー、バレンタインにチョコ…? もらったこと何回 もあるけど、渡すのは初だよ(笑)」 「そっかー!珊瑚喜ぶといいねっ!」 翔は少し気分も晴れたのか、紅葉につられて笑顔を見せた。

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