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【ドイツ旅行 ~プロローグ1~】

※「恋愛以上恋人未満」の翔と珊瑚も出てきます。 「紅葉自転車貸してー?」 「いーよ。僕今使ってないから…あげる。 タイヤの空気とかチェックしてね。」 「了解ー。」 紅葉は夏のストーカー事件以来、自転車通学は止めて、近所の買い物やみなの家に行く時くらいにしか乗っていない。 基本的には凪と一緒にいるので、寒くなった今はほとんど使っていないのだ。 一方珊瑚は都内の駐車場代の高さに驚き、自転車を足に都内の撮影に行くらしい、真新しいリュックにカメラを詰めている。 「珊瑚、翔くんは?起きた?」 「…多分まだ寝てると思う…」 「そろそろ起こして。 一回家帰るだろうし…」 今日はイベントLIVEでLinksもLiT Jも同じステージに立つのだ。メイクや衣装は現地でやるが、そろそろ支度を始めないとという時間になってきた。 「えー…。めんどい…。」 凪が早くと言うが、珊瑚はダルそうにソファーに寝そべりながら平九郎と遊んでいる。 「…じゃあ僕が起こしてくるよ!」 「「待てっ!」」 「?!」 紅葉が翔を起こしに行こうとしたところを珊瑚と凪の2人が同時に止めた。 「翔くん…服着てんの?…珊瑚、行って。」 「はいはい…。」 「っ!」 赤くなって固まった紅葉の横を通って寝室へ向かう珊瑚… 「あぶなかった…っ!」 ふぅ…と息を吐く紅葉。 「いくら翔くんが身内枠でも他の男の裸見せるわけにいかないからなー。 目移りされても困るし…?(笑)」 4人分のブランチを準備しながら、凪は冗談でそんな風に告げた。 「目移りなんてしないよー。 LIVE後とかで上半身裸の人もいるけど、そういう目で見たことないし…っ!」 「でも…俺のことはよく見てるよね?」 「だって…っ! …大好きなんだもん…っ!」 「あー、…身体が?(笑)」 紅葉の答えに満足しつつも、凪は言葉遊びを続けた。 「ちが…っ!(笑) もぉー…!」 「あ、コーヒー出来た。 紅葉はカフェオレにするんでしょ? 牛乳出して?」 「えっ?今のは絶対チューの流れだったよ?」 「そう…? ってか、あいつら遅いな…ナニしてんだか…!(苦笑)メシが冷める…」 「…ねーっ! チューは…っ? 最近全然してくれないよ?何で?」 「何でって…(苦笑)してるよ? 朝、起きた時にしたでしょ?」 「それは"おはようのチュー"でしょ? そうじゃなくて…"何でもないチュー"が足りないよ?」 同棲を始めて間もなく1年を迎える。 少し落ち着いてきたのだと凪は思っているが、紅葉は不満らしい。 「おはよー。 …ラブラブカップルだと思ってたのに、帰省前に倦怠期なのー?」 「けんた…??」 聞き慣れない日本語に首を傾げながら紅葉はスマホの辞書を開こうとしている。 「紅葉、調べなくていいから…。 …おはよ、翔くん。朝メシ食ってく?」 「…食べる。」 ニコリと笑顔を見せる翔のすぐ後ろから珊瑚が階段を降りてきて、翔とは対照的に不機嫌そうな態度で洗面所へ向かった。 「何?そっちこそ朝から喧嘩?」 凪は心配してそう聞くが、どうやら違ったらしい。 「いや、ちょっと"狙い"?が狂って…!」 「ちょっと…? うわ、髪まで飛んでんだけどっ! セットしたばっかなのに最悪ー!」 洗面所の水音に混じって珊瑚の文句が聞こえてくる。 「ごめんって。 あ、俺直してあげるよー。」 バタバタと翔は珊瑚の元へ向かった。 「……。だから朝からナニしてんの…。 …早くしてね、冷めるよ。」 意味を理解した凪は「先に食べよ」と言い、頭にハテナマークを浮かべている紅葉を連れてテーブルについた。 「いただきまーすっ!」 空腹だった紅葉はニコニコと箸を進めた。 翔と珊瑚もコーヒーを手にテーブルにつき、4人でブランチだ。 「機嫌直った…? ほら、俺のおかずも食べていーよ?」 自分の皿からベーコンを一枚取り、珊瑚の口元へ運ぶ翔…と、何の躊躇いもなくそれを食べる珊瑚… 口の中が空になったタイミングでキスを交わす2人… 「! アーンしてチューだ…っ! …すごい…。ラブラブ…っ! えっと…さっきの何だっけ…? けんたいき…?」 珊瑚が食事をすすめながら、意訳したドイツ語と英語を紅葉に伝える。 「っ!!」 「違うっ! 紅葉、俺は人前でキスとかしないの。 日本人だから…。」 「翔くんだって日本人だし…、人前って言っても珊瑚は家族だよ…?」 「でもさぁ…っ!」 明らかにショックを受けた表情を見せる紅葉を庇いながら、凪は悔しいのでドイツ語で珊瑚に言い返していく… 「へぇー… 単語だけじゃなくて喋れてるじゃん。 凪、けっこう勉強してんね。」 「珊瑚…! 余計なこと喋り過ぎっ!」 「何ー? 分かんないよ。みんな日本語で話して!」 一人会話に加われずに翔が困惑していた。 「ホントに…翔は何度ドイツ来ても覚えないよな…(苦笑)」 「覚えてるよ! 喋れないだけで…言ってることはなんとなく分かるし!(苦笑)」 「いや、分かってねーよ…! ほぼジェスチャーじゃんー。」 「えー?そう?全然大丈夫だよ! あ、話変わるけど、珊瑚今日LIVE見に来る? イベントだから出番短いけど、新曲やるから聴いて欲しいなぁ。」 「行かねーよ。平九郎の世話もあるし…!」 「そう言わずにさー…!」 仲睦まじい2人を羨ましそうに眺める紅葉に凪は恒例のセリフを告げた。 「紅葉…後でね?」 凪はコクりと頷く紅葉の頭を一撫でして、食事を続けた。

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