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【ドイツ旅行~プロローグ~ 2】

落ち込み気味の紅葉はリハーサルの出来もイマイチで光輝に怒られていた。 元気のない紅葉を心配して、あの鬼のリーダーと呼ばれる光輝が「まぁ…調子の出ない日もあるよね…。明日からドイツだから、楽しめるように頑張ろうね。」と優しい言葉でフォローするくらいだった。 紅葉自身も反省して、マツ(LiT Jのベース)にアドバイスを貰いに行ったり(ついでにまたお菓子ももらっていた)、従姉妹のみなにもアドバイス(こちらは自分磨きのための助言)を聞きにいっていた。 凪はこのままでは本番に差し支えると紅葉を人気のない場所に連れ出した。 「ごめんね、凪くん…! 本番はちゃんと頑張るから…っ!」 やはりどこか元気のない恋人をギュッと腕の中に抱き締める。 「凪くん…っ!」 「ごめん…、俺の態度のせい? マジで倦怠期とかじゃねーから。」 「ホントに? 飽きてない?変わらずに…僕のこと好きでいてくれてる?」 「そりゃあ付き合いたてとは変化はあるよ? でも好き。 紅葉に対して飽きるとかないよ。」 いつも凪を想い、時に斬新なアイディアを出してくれたり、愛情表現豊かな紅葉は凪にとって最高の恋人だ。 「良かった…。 僕はずっと大好き。 気持ちは膨らむ一方だよ。 でも食べ過ぎたり、甘え過ぎたりしてるから…。恋人になって、同棲してるからってあぐら?かいたり?天狗?になっちゃダメだよって…みなちゃんが…。」 日本語の意訳があまり分かっていないだろうが、とりあえず紅葉は自分に落ち度があると思っているようだ。 「俺は紅葉が自分が作った料理美味しそうに食べてくれるのを隣で見るのがスゲー好きだし、お前の髪をサラサラに保つためにトリートメントしたり、ドライヤーかけたり何でも甘やかしたいんだけど…?」 「っ!良かった…っ!」 紅葉は安心した表情を見せて、凪と向き合った。 「なんつーか…うん、緊張してんのかな?」 凪は自身の手を握ったり、開いたりしながら「カッコわりぃね…」と、呟いた。 「…LIVE前だから?」 「いや。 もう…出発だし…?」 このイベントLIVEが終わったら、明日の午前中の便でドイツへ向かうのだ。 もちろんドイツには行きたいし、とても楽しみだけど、恋人の家族に会うとなると複雑な気持ちで凪はナーバスになっているのだと告げた。 「だって、お前のおじいちゃんとおばあちゃんに会うんだし。」 「うん…。でもいつもオンラインでお話してるし…2人もアビーたちもすっごく楽しみにしてるよ!」 最近は3日に一度くらい話している。 おかげで凪のドイツ語もかなり上達している。 「うん、それはもちろん分かってるんだけど…。 でも実際会うの初めてなのに、お前を下さいって言うんだよ?(笑)」 「っ! ホントに…?! そんな…っ!い、言ってくれるの?」 感激して両手で口元を覆う紅葉に凪は照れ臭さから控え目に頷いた。 「だって…日本国籍選ぶって話して、学校のプログラムではドイツとかフランスの音大に1年だか2年?戻れるのを、紅葉は戻らないわけでしょ?」 「うん。 遊びには行きたいけど…そんな1年とか…! 凪くんと離れられないし…。 バンドも頑張りたいし!」 「…だよね? だから俺からもケジメとして言おうと思って…! って、これネタバレ? お前に話していーのかな?(苦笑) んー、とにかく…! ただ遊びに行くわけじゃないから…! 緊張しないわけないじゃん? …うちの母親にも散々プレッシャーかけられてんだから…(苦笑)」 紅葉の実家に行くことを話したら、ちゃんとした挨拶をしろと言われまくり、結納金はいるの?かとか細かく聞かれたのだ。 もちろん凪の実家からのお土産も持たされている。 「そーなの? ごめんね、知らなくて…。 そっか…。そう、だよね。 僕も…凪くんのお母さんに同棲のことお話する時すごく勇気がいったの覚えてる…! あ!待って!僕も凪くんを下さいってお父さんとお母さんにお願いしないとっ!!」 「…え、…今更? むしろ俺がお前を親たちに取られてんだけど…?(笑)」 カミングアウトしてから実家に行く度に紅葉の取り合いなのだ。凪の家側は全く問題ない。ので、今は置いておきたい。 「んと…?」 「話戻すけど…。 カッコわりぃけど、緊張してるだけだから。 紅葉は変に心配しないで大丈夫。」 「うん…、分かった。 ごめんね、僕、自分の要求ばかりで凪くんの気持ちに寄り添えてなかったね…。 おじいちゃんたちは反対しないと思うけど、僕もちゃんとお話するから心配しないで! あと、凪くんはカッコ悪くなんてないよ!」 紅葉は一生懸命に凪の気持ちを考えて、素直な言葉を伝えた。 「ありがと。 キス…する? 見られるかもだけど…」 「うん…っ!」 触れるだけのキスを交わして、ようやく安心し、いつもの笑顔になる紅葉…。 「ちゃんと挨拶して許してもらったら、ハネムーンしよ?」 「っ!う、ん…っ!」 そんなことを耳元で囁かれて赤面する紅葉…。 「あと…ちゃんとフォローするからいつも通り前見て、笑顔で、全力でいけ。」 頼もしい凪の言葉に頷く紅葉にもう不安はなかった。 2人は本番に向けて準備を進めるために楽屋へと向かった。

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