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【ドイツ旅行~プロローグ3~】

戯れながら楽屋に戻ると珊瑚が来ていた。 「あ、やっと来た。 連絡なしに来たのに俺…顔パスで入れたけど、ここのセキュリティ大丈夫?」 珊瑚と紅葉は双子といっても二卵性なので、見分けがつかないほど似てるわけではないのだが、見慣れない人間が見たらパッと見分からないのかもしれない…。 「そうなの?まぁ、いーよ! それよりどうしたの?撮影は? 翔くんなら2つ隣の楽屋だよー?」 紅葉が尋ねると珊瑚はそれがさ、と話始めた。 「雨降ってきたから切り上げて帰って…。 本降りになる前に平九郎の散歩行ってたらあいつが仔猫見つけて…!」 「にゃんこっ?!どこ?」 紅葉が興奮して珊瑚が指差した小さな段ボールを覗いた。 「かわっ!かわいっっ!! ちっちゃーいっ!1…、2…、3匹も?」 紅葉は生まれたての仔猫に大興奮の様子だ。 小さくて可愛い物が大好きな強面のマツは泣きながら箱を眺めている…のを、みなが引きながらスマホで撮影している。 「捨てネコ拾ってきたの? 平九郎は?」 凪が驚いて珊瑚に確認する。 「平九郎が箱から離れないから仕方なく…! 雨降ってたし…死んだりしたらイヤじゃん? とりあえず一回家に帰って平九郎だけ置いてきた…。 で、どーしたもんかと…。電話しようか迷ったけど、とりあえずここに連れてきた。」 「え、うち借家だからね? 飼えないよ?」 「飼えないの…?」 凪の台詞に紅葉が残念そうに呟いた。 「…じいさんに聞かないと…。 ってか、ネコってペットホテル預けられるの…?飼ったことねーし…。 誰かネコ飼ってるやついないー?」 イベントに集まってるバンドマンに聞いて回り、情報を集める凪。 そこへ騒ぎを聞き付けた翔がやってきた。 「珊瑚ーっ! 俺に会いに来てくれたのっ?! 嬉しいなっ!」 「あ、翔ー。 こいつら動物病院連れてくから金くれ。」 「……。いーよ。 俺の恋人は動物にも優しいんだね…。」 しょんぼりしながらも恋人に五万渡す翔…。 「可愛いーね。…飼いたいな。」 仔猫の段ボールに人が集まり、飼いたいと言う者も出てきた。 「本当? 俺、海外在住で連れて行けないから…! 飼い主募集中。 欲しい人…ちゃんと飼える人は…翔に言っておいて。」 仔猫の連絡係りにまでされる翔…。 「えっ?珊瑚、もう帰るの? LIVE見て行かないの?」 「病院連れて行かねーと…。 LIVEは…ツアーん時でいい? どっか顔出すよ。」 「うん…。」 残念そうな翔の顔を見て、珊瑚が歩み寄る。 「……キスする?」 「する!」 見つめ合った長身の2人は、楽屋が並ぶ狭い廊下、大勢の人前で熱烈なキスを交わす。 写真を撮られたりヒューヒュー言われながらも全く気にする素振りはなかった。 そしてそのまま珊瑚は仔猫の入った段ボールを抱えて帰っていった。 「…あのっ! 僕…白い子、欲しいんだけど…。」 「あ…?えっと、誰?」 熱烈なキスでご機嫌になった翔に話かけてきたのは、紅葉よりも更に線の細い色白の少年だった。 「ユキ…っ!お前勝手に…っ!」 「ダメ…?葵もネコ好きでしょ?」 「あー、Aoiのカレシちゃん…? ユキくんつーの?」 「翔、今の話なしで! なんで勝手に飼う気になってんだよ…!」 「僕が面倒見るよ…?」 「お前はまず自分の面倒見ろよ…! バイトくらいしろ。むしろ居候やめろ。」 「バイトしたら飼ってもいい…?」 「バイトして、一人暮らしして、それで飼ったら?」 「Aoi冷たーい! いいじゃん、2人で飼えばー! ねー?」 翔はそう言うが、ユキはシュンとして行ってしまった。 「あの子誰?細せーな…。 Aoiくんのツレ?」 凪が翔に聞いた。 「確かに細いよね。紅葉くんより小さい子って珍し…!あ、悪口じゃないよ?(苦笑) なんかクラブだかバーでナンパしてお持ち帰りしたら初物だったらしくて、それ以来ずっと家に居着いてるんだって(笑)」 「なんだそれ…(笑)」 ユキと呼ばれた少年は…実際は凪より年上の25才だった。紅葉に仔猫の写真を見せてもらっている。ブレブレの写真だが、可愛い…と呟く2人。 「さっきの僕の兄弟だから、あとでちゃんとした写真送ってもらうね。カメラマンだから上手なんだよー!」 「ありがと。」 どう見ても同年代に見える2人は仲良くなったようで、LINEを交換して、紅葉はマツにもらったお菓子を与えていた。 その後、リハーサル時の失敗がまるで嘘のように紅葉の調子も戻り、LinksのLIVEもイベントも無事に終えることが出来た。 みなと光輝、それに誠一からもドイツの家族へのお土産を託されて夜遅くに帰宅する凪と紅葉。 「平ちゃーんっ! 赤ちゃんにゃんこ見付けて偉かったねっ!」 平九郎を褒めながら頭を撫でる紅葉…。 「お帰り…。 とりあえず今夜は動物病院に預けた。 平九郎の行ってるとこ。 いろいろ検査結果待ち。」 飼い主が見つかるまでこの家で珊瑚が面倒見るつもりのようだが… 「よくじいさんOKしたな…。 なんとか俺たちが帰ってくるまでに飼い主見つけてね?」 「家は好きにしていいって。 まだチビだからすぐ見つかると思うよ。」 「残念…。抱っこしたかった…!」 「やめとけよ、お前猫アレルギーじゃん?」 珊瑚が紅葉に指摘するが、紅葉は驚いていた。 「えっ?! …そうだっけ?」 「なんで自分のアレルゲン忘れるの?(笑) 誰だっけ?友達の家に遊びに行った時、くしゃみ止まらなかったじゃん?」 「…あーっ! そうだっ!そんなことあったね! えー…。じゃあネコは飼えないのか…」 「残念だったな…。 ユキだっけ?あいつが飼えるなら写真見せてもらえば? ほら、早く風呂入って寝るぞ。」 LIVEの疲れもあるので、少しでも休もうと凪は紅葉を促した。 「はぁい…。」 「あ!明日の朝の散歩どーする? 俺行こうか?」 珊瑚が出国前で忙しい2人を気遣って確認してくれたが… 「ううん。 しばらく平ちゃんに会えないから2人で行くよ。珊瑚寝てていーよ。」 「了解ー! 明日から仔猫の世話だから寝とく。 あ、翔ここに呼んでいい? 仔猫の世話手伝わせるし。」 「いーよ。寝室だけは入んないで。 あとはご自由に。 適度に掃除とかもしてね。」 凪からの返事に珊瑚はOK!と答えた。

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