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【ドイツ旅行 (7)】

食べ盛りの少年たちは起きた瞬間から腹ペコらしい…。 「あと5分待って!」 そう告げる凪をアビーも手伝い、朝く食を並べていく。 最後にフルーツを出したところで、サチに起こされたらしい紅葉が起きてきた。 「おにぎり…っ!」 こちらも腹ペコらしい。 凪は紅葉の分のプレートをテーブルに置いた。 「はいはい…。 ほら…。 …おはよ。 身体へーき?」 「ん、ありがと。 おはよ。」 昨夜の名残もあり、みんなの前だが、気にせず朝からキスをしてにこりと笑う紅葉の頭を撫でる凪…。 「ラブラブねっ!」 「当たり前だよっ!2人は結婚するんだ!」 「結婚はまだだよ!婚約だよっ!」 「コンヤクって何ー?」 下の3人が盛り上がっている。 婚約も結婚も形にすることは出来ないけれど、気持ち的には同じなのでみんなの祝福が照れ臭いが嬉しく感じる。 「ほらー、時間ないぞー?」 凪が支度を急かして今日もバタバタも慌ただしい時間に入る。 今日は祖母が血圧の薬をもらいに行く日らしく、隣街へ行くため子守りを頼まれた。 「年を取るとデートの行き先が病院ばかりね。」 愚痴を溢す祖母に「終わったらランチをしよう」と告げる祖父。 結婚して50年を越えた彼等は今日も仲良しだ。 「はい、ごはんよー!」 隣の親戚宅のニワトリ小屋へ餌やりのお手伝いにいくサチに付き合う凪。 「うわっ!ちょっと、さっちゃん! こいつらヤベーよ…っ!」 見慣れない凪をつついてくるニワトリたち。 サチは慣れた様子で追い払いながら笑っている。 24の大男が4才の女の子に守られている状況になんとも言えなくなる凪…。 「終わった? …さっちゃん、お買い物行こうか?」 凪の運転で隣街にある大型スーパーへ向かう3人。凪はハンドルを握りながらミラー越しに紅葉と目線を合わせて聞いた。 「おばあちゃんたち何て?」 先ほど祖父母と話してた紅葉は少し元気がなくて心配する凪…。 「ん、大丈夫…。あとで話すね…。 あ! クロイから今日飲みに行かないかって…」 「…いいんじゃない? えっ? …俺も?」 「うん…! いや? 幼馴染みとか同級生も何人か来るって。 多分うるさくなるけど…みんなに紹介してもいい?」 「…喜んで。」 凪の返事に笑顔を見せた紅葉は早速メールを返信して、その後はサチに平九郎の動画を見せたりして移動時間を過ごした。 「この動画、凪くんもあとで見て! 平ちゃんと赤ちゃんにゃんこの戯れ! すっごい可愛いーよ! あぁ…平ちゃん…早く会いたい…。」 既に平九郎シックの紅葉をサチが宥めていて思わず笑いが漏れる凪…。 駐車場に車を停めて、 人目を引くバギーを嫌がる妹を嫌な顔1つせず抱き抱える紅葉。 小柄とはいえサチも15kgはある。 細身の紅葉にはキツいだろう… それでも敷地が広いので歩かせるには負担になるとそのまま連れていくようだ。 出掛ける時はペースメーカーのデータを飛ばす機械も持ち歩くのでけっこうな荷物になる。 「紅葉…身体ツラいでしょ? さっちゃん俺の抱っこじゃダメかなー?」 目線を合わせて「おいで」と優しく言えば手を伸ばしてくれたので、凪が抱っこすることに。 「ありがと…! いいなーさっちゃん! 凪くん大きいから景色がいいでしょ!」 「カフェとかあんの? 買い物の前に昼飯テキトーに食べて行こう!」 「いーね!さっちゃん何食べたいー?」 「おにぎりっ!」 彼女の答えに2人は笑いながら店内へと向かった。 昼食を終えるとショッピングカートに乗ってくれたので、ゆっくりと店内を回りながら買い物をしていく。 日本の食材は割高だが、せっかくなので必要な物を選び、祖母に頼まれたものも購入する。 2人が来ているから多少豪華な物を食べるのは良いが、贅沢のし過ぎはダメだと言われているので気をつけながら買い物をした。 「さっちゃん何か欲しいのある?お菓子?」 お菓子コーナーでカートから下ろして棚を見せるが、欲しい物はないらしい。代わりに紅葉が選んでいる。 「何ー?」 凪に「プリン…」と伝えたので、見に行くが首を振るサチ… 聞き取り間違えたかと思った凪だったが、紅葉は「ひょっとして…凪くんの作ったプリン?」と確認すると彼女は頷いた。 「えっ? そっか…!気に入ってくれた? いーよ。すぐには食べれないけど、卵と牛乳買ってまた作るからね。」 素直に嬉しさを感じた凪はサチを肩車してレジへと向かった。 すれ違う人たちが手を振ったり、声をかけてくれる。 「いいね!お兄さんたちとお買い物?」 「うん!お兄ちゃんと、ママとっ!」 「ママ…?」 サチの答えに戸惑うご婦人… そのままスルーしたが、 他人から見たら自分達3人はどんな関係に見えるのだろうかと、一瞬だけ気にはなったが… そんなことは重要じゃないのだと歩みを進める。 「ママって凪くん?」 紅葉が確認するとそうだというサチ。 「えっ?! 俺…?(苦笑) せめてパパでしょー?」 「パパ、カケっ! ママ、なぎ…っ!」 「……。ちょっと無理…。」 両親共にいないサチには良く分からないのも仕方ないかと思ったが… 「凪くんはソーセージをカニさんにしてくれたり、手作りのプリン作ってくれるし、髪の毛も乾かすの上手だからからママなんだって。 翔くんは失敗したりダメなとこがあるけど、一生懸命サチの面倒みようとしてくれるし、いつも一緒に遊んでくれるからパパなんだって。」 「なるほど…!」 カップリングではなく、母親像、父親像に当て嵌めて言ってくれたようだ。

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